じゅーよん。【ようせいさん】 ページ16
「やだ!寧々ちゃんを口説くんなら花子くんの前で死んでやるんだから!」
「そうよ!花子くんには光璃がいるでしょ!
それにトイレ掃除か、1人で書類整理かだったら書類整理の方がいい」
「わぁ〜、たんまたんま!
わかったからミツリ死んじゃダメだヨ!ヤシロはエラ呼吸が恋しいみたいだから、一緒に魚用の餌買いに行こ!」
どこから出したのか水の入った水槽を手に持ち、私の手を引いて彼岸の世界に買い物へ行こうとする。しかし、さすがに寧々ちゃんも魚になるのは嫌だったのだろう。コロリ、と態度を変えたかと思えば掃除をし始めた。
まぁ、花子くんが巫山戯てるのも分かってるんだけど。流石にこんなことに妬いちゃうのはダメだよね、少しだけ反省をした。
◇◇
翌日。
私は、午前中にあった英語の授業を体調不良でサボっていた。静まり返った廊下、各教室から響く授業の音。本来ならば保健室で寝ていなくてはいけないものの、我が校の保健教諭は適当なもので、保健室にいることは滅多にない。そんな適当さ加減に甘え、保健室を抜け出した私はそろりと廊下を歩きつつ、花子くんからのお願いについて熟考する。
最近、大切だったものや普段よく使うものが相次いで消える事件が起こっている。それと共に、“ようせいさん”という怪異の噂も流れていて。
注意深く扱っていたものを失くしてしまったり、いつもはあるハズの物が必要な時に限って失くなってしまう。それ等は“ようせいさん”の仕業。でも、その姿は決して見てはいけない―――見てしまったら、命まで盗られてしまうから。
なんていう、幾重にも改悪された人に害を与える怪異の噂だ。怪異は噂に逆らうことが出来ないとはいえ、この学校にそんな危ないモノを野放しにしておけるはずはない。そんな怪異達を見つけ、弱体化させる――それが祓い屋としての私の使命であり、花子くんからのお願い。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったと思えば、教室内では失くしものをした生徒たちの声がざわめいている。
「……居るとしたら旧校舎、かな」
私は、誰にも見つからないよう、1人旧校舎の方へ歩き始めた。
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作者名:沙之揺來 | 作成日時:2020年2月21日 3時