第104話 ページ9
凜はうっすらと苦笑しながら、拓磨を見つめて言う。
「...でも、私たちやっぱり似てたみたい。二人とも、春美を好きになるところなんて特にそう。顔かたちが似てなくても、やっぱり脳の中は似てた。拓磨だって春美のあの明るさが、好きなんでしょ?
春美も言ってたの。『凜の優しさって、私の彼氏に似てるんだよね。』って。『だから凜に惹かれてるのかもしれない』って。他の人から見てても、私達は似てたんだね。
でもね、拓磨。私は似たくなかった。拓磨とは全然違うって、信じたかった。パパの事故はしょうがないにしても、私を監視して脅して真実をねじ曲げて、ママを陥れて、自分は嘘をつき続けて、私を見つけたらまた問い質して。こんな人と、絶対に似たくなかった。でも、やっぱり似てるのよ。私達は紛れもなく、同じ母親から一緒に産まれた双子なの。この事実は、受け入れないといけない。」
そこまで言って、凜は表情を変えた。
口角を下げ、目付きを変え、拓磨を強く睨んだ。
「でも、私はやっぱり似たくない。拓磨とは、どこか違う人でありたい。双子っていう関係性が切れないのなら、私は今すぐに終わらせたい。」
そう言うと凜は、目の前の拓磨の胸を両手で思いっきり押しのけ、拓磨を突き飛ばした。
「っ...凜...?」
数歩よろけた拓磨は、体勢を整えようとしながら凜の顔を追いかけた。
拓磨が姿勢を崩したのを確認した凜は、突然拓磨のところに駆け寄り、拓磨が起き上がるのを許さない状況を作った。
「っ...」
突如屋上に流れる、異様な空気。
凜は座り込む拓磨を、上から睨みつけた。
「...本当は心から、あなたに消えて欲しい。それはこの世から、という意味じゃなくて、私の住む世界から、っていう意味でね。私はあなたが必死に隠している真実を誰かに易々と話すつもりはないし、あなたと縁が切れればなんでもいい。だからママがいなくなってから、おばあちゃん家に行くのではなく、養子縁組を組むっていう選択肢を取った。こっちからあなたの世界から消えてやったのよ。
だけど、あなたは違うみたいね。いくら生活圏を離したって、縁を切ったって、あなたは私がいつ真相を漏らすかが心配でならない。だから、たとえ縁を切ったとしても、どんなに遠くに逃げても追いかけてくるし、私やあなたの作った人間関係もあなたは平気で壊してしまう。
...もう、ここを終着点にするべきなのよ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (
レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです！他の作品も今から読ませていただきます！執筆、本当にお疲れ様でした！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)！改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fruit | 作成日時：2019年8月13日 23時
