知ってはならない。【3】

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カフェで30分ほど本を読みながら休憩していると、携帯がバイブレーションを鳴らした。
読んでいた本を閉じ、携帯の画面を見ると、さっきメールを送った精神科医の吉井先生からの返信の通知だった。

「お、意外と早いな...」

そう一人で小さな声で呟きながら携帯のロックを解除し、メールを開くととても簡潔な返信が返ってきていた。


『私にもわかりません。現物をこちらに送ってください。しらべます。』


忙しいのだろうか...と申し訳ない気持ちになりながら、わかりました、ありがとうございますと返信した。


入り口が縫い合わされたポケットから出てきた黒い小さいもの。
その写真を撮って吉井先生にメールを送ってみたが、彼もわからないとなると...もう相談する相手は私にはいない。
この謎の物体を吉井先生に郵送し、大人しく答えを待つ他私に手はない。

この狭すぎる私の人間関係は、大学卒業と同時にほとんど全ての人と縁を切ったことに原因があるため、しょうがないとは思っているが、こういう時人脈に弱いのはやはり困る。

構いませんよ、と彼は言うが、これからも、吉井先生に頼る人生になるのかな...と思うととても申し訳ない気持ちになる。

私は小さくため息をつくと、席を立って飲み物のグラスを返却口に返してカフェを出た。




家に着くと、すでに拓磨は帰ってきていて、晩ご飯の用意をしていた。

「ただいま。」

「おかえり。ちょっと遅かったね。仕事？」

私はうん、と返事しながら奥の和室に行き、スーツから着替える。


ジャケットを脱いでハンガーにかけ、ブラウスを脱いで床に放り投げると、裏返しになったブラウスに目が留まった。

「...？」

私は慌てて部屋着を着て、ブラウスを拾って顔に近づけた。

「やっぱり、こんなのなかったよね...」

ブラウスの裏側には、小さく正方形に布が二重になっているところがあった。

わかりやすく言えば、
「裏側に小さく誰かがポケットを作った」
という感じだ。

「バッグと同じだ...」

その正方形を指で触れると、中には何か入っているようなふくらみを感じ取った。
やはりこれも、ライターのような大きさ。さっきと同じぐらいだ。

ブラウスに布をコの字型に縫い付け、この中のものを入れ、残り一辺を縫い合わせて口を閉じた、といった要領だろうか。

私はバッグから先ほどの小さなハサミを取り出し、縫い合わせてある糸を切って中にあるものを出した。

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