知ってはならない。【3】

Another4 ページ30

卒業式2日前。
私はいつものように拓磨に呼び出され、なんともない時間を過ごしていた。

お昼を済ませ、15時を回った頃のこと。
本を読んでいた私の元に、同じく本を読んでいた拓磨が突然本を閉じて近寄ってきた。

「...?」

私は記憶失いモードに素早く切りかえ、拓磨の方に顔を向けた。

目線を向けられた拓磨は、少し驚きながら、でも私から目線を外さずに言った。



「春美...。やっぱり、卒業したら一緒に住まない?」


私は心の中でまたか...とため息をつき、拓磨に言った。


「それはこの前断ったよね?私は一人暮らしがしたいんだよ。」

「わかってる。でもやっぱり、春美と一緒に住みたい。」

「そう言われても嫌だよ。第一、私たち付き合ってるわけじゃないんだよ?」

「もうそんなこと言ってる間柄じゃないよ。それに僕はまだ春美のことが好き。付き合ってほしいんだよ?」

「私はまだ違うと思うってこともこの前伝えたよ。記憶を失ってから平松くんに恋愛感情を抱けないの。もう1回謝った方がいい?」

私の言葉を聞くと、拓磨は不満そうな顔をした。


実は、私が記憶を失っている間に、1度拓磨から告白されたのだ。

でも本能だろうか。なんとなく、拓磨には恋愛感情を抱いてはいけない、と心にブレーキがかかっていた。

だから私は、まだ恋愛感情は戻ってないから、恋人という関係は持ちたくないと断った。

それから拓磨は何度か私と復縁しないか交渉してくるが、今日までずっと断ってきている。
無論、今日も願いを聞き入れるつもりはない。

「わかった。付き合えとは言わないよ。でも、ここまで毎日一緒に過ごしてるんだもん。一緒に住もうよ。」

...どうせ拓磨こそ恋愛感情など持っていない。
ただ単に監視したいだけだ。

いつもより少ししつこく言ってくる拓磨に、怒りの感情を抑えながら言った。

「今と昔の私は他人みたいなものだし...。第一、付き合っててもキスもしたことないような人と一緒に住むっていうのも、私は納得いかないよ。」

「え?」

「...?」

突然拓磨の目が見開かれた。
私はその反応に疑問を持ち、どうしたの...?と聞く。

「いや...。うん。春美の言いたいことはわかったよ。ごめんね。」

「う...うん。気にしないで。」

依然疑問が晴れない私はモヤモヤしたまま、再び本を開いた。

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