第111話 ページ16
「言いたいことは、それで終わり?」
軽々しい拓磨の声に、私は小さく頷く。
すると拓磨は満足気な顔でそっか、と呟いた。
正直、拓磨が最初なんであんなに私の謎解きに反対したのか、わからなかった。
危険だという言い分はわかる。
でも、それだけの理由であの程度まで反対するものか、と
どこかで納得出来ていなかった。
でも、今ならわかる。
あんなに反対したのは、私に謎を解かれるのが怖かったから。
せっかく揉み消した事実を、私によって再び呼び覚まされるのが嫌だったから。
それほどまでに隠したかった、奥底に眠っていた事実を、私は掘り起こしてしまった。
私は一瞬目を閉じ、深呼吸をした。
これで全て終わる。
長いようで短かった謎解きも
思うように楽しく過ごすはずだった人生も
ここで今、完全に終わりを告げる...
私は目を開けると再び顔を上げ
自ら彼の胸に歩み寄り
体を彼に接着させ
ゆっくりと腕を、彼の背中に回した。
拓磨は何も言わず、静かに私を抱きしめかえした。
久しぶりに感じる、拓磨の温もり。
私は一生、彼の腕から逃れることはできない...
恐怖と、後悔と、寂しさが入り交じった感情。
ぐにゃぐにゃした気持ちをこの窮屈な環境でどこに吐き出していいかもわからない。
何かを発散するように、私は拓磨の背中の服をぎゅっと握った。
すると拓磨はその力を緩めることはなく、むしろいっそう強く、私を抱きしめた。
「春美...」
そう呟きながら、拓磨は私の肩に頭をのせた。
しょうがなかったんだ。
私は、この選択しか出来なかった。
凜と出会った時点で、凜を理由も知らず失うことはできなかったし
その理由を知るということは、この結果を生み出すということ。
仕方ない結果だ。
もしかしたらこれが最善なのかもしれない。
...そう、思えばきっと大丈夫。
自分を保っていける。
私はきっと、正しい選択をしてきた...
自分に言い聞かせるように、頭の中ではそういう言葉を並べた。
私は正しい。間違ってない。
少しでも気を抜くと、それ以外のことを考えてしまいそうだった。
私は私を見失わないように、ぎゅっと目を瞑っていた。
すると突然、拓磨が私の肩で、ふふ...と笑った。
「え...?」
私が思わず声を漏らすと、拓磨はまた少しだけ抱きしめる力を強めて言った。
「臆病者。」
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (
レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです！他の作品も今から読ませていただきます！執筆、本当にお疲れ様でした！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)！改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fruit | 作成日時：2019年8月13日 23時
