第48話 ページ2
依然、私には訳の分からない状況が続く。
1人ぽかんとしていると、凜のお父さんは苦笑したまま説明を始めた。
「ほら、僕達は凜との信頼関係のうえで成り立っていると言っただろう?だから、やっぱり正直これを見るのは億劫なんだ。でも、僕達には幸せにも、春美ちゃんという存在がいて、凜のことをちゃんと知ろうとしてくれている。それなら、凜の昔のことは春美ちゃんに任せて、僕達は今まで通り、凜の昔を知らない生活を続けようっていう話になったんだ。僕達はその資料を見ないよ。その代わり、春美ちゃんには思う存分調べあげて欲しい。」
ずっと笑顔を作る凜のお父さんとお母さん。
決してその笑顔は愉快なものではなく、作り笑いだということは誰にでも見て取れるまでだった。
私が黙って2人の顔を見つめていると、今度は凜のお母さんが口を開いた。
「なんか、押し付けてるみたいでごめんなさい。単に私たちが、見ないという選択肢を取っただけで、この選択には春美ちゃんが気を使う必要はないのよ。春美ちゃんが見たくないなら、見なくていいし、調べたければ調べて欲しい。ここに書いてある真実は、いずれにせよ春美ちゃんにしか明かさない。」
凜のお母さんはそう言うと、今度は封筒を持ち上げて直接私に差し出した。
「春美ちゃん。この封筒の処理はあなたに任せるわ。そしてもし、凜が飛び降りた理由を調べるなら、そのための協力はいくらでもする。思い当たることがあればいくらでも話す。」
凜のお母さんの声はどんどん太く、しっかりとしたものになっていく。
私が震えながらそっと両手で封筒を受け取ると、凜のお母さんはにこりと笑って、ありがとう、と言った。
さすがに今すぐこの封を開ける勇気は持ち合わせていない。
封筒を持ったままぼんやりと見つめていると、突然凜のお母さんがすっと立ち上がった。
「え...」
「じゃあ、春美ちゃん。凜の証、頼んだわよ。頑張ってね。」
凜のお母さんはそう言うと、私に返事する間も与えず靴音を立てて出口に向かっていってしまった。
「え、いや、あの」
助けを求めるように凜のお父さんを見ると、彼も彼女を追いかけるように突然立ち上がった。
「じゃあ、頑張ってね。」
はい...と言う私の声も待たず、凜のお父さんは足早に凜のお母さんを追いかけて行った。
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fruit(プロフ) - 黒百合さん» コメントありがとうございます!!!お見通しの通り、伏線、いっぱい張ってますよ〜笑もうすぐクライマックスに差し掛かります。推理も一緒にお楽しみください!!これからもよろしくお願い致します!! (2019年7月19日 20時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
黒百合(プロフ) - ストーリーの至るところに伏線が隠されている(と私が思っただけですが)ので、展開を考えて読むのが楽しみです。ストーリーの緊張が高まった所で切れるのでドキドキしながら読んでいます。更新、頑張ってください!応援しています。 (2019年7月17日 22時) (レス) id: a567d07bc8 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» コメントありがとうございます!!第1弾に続けてコメントくださって本当に嬉しいです!!!!ここからはテストが少なくなるので、どんどん更新していくつもりです。どうぞ最後までお付き合い下さい!いつもありがとうございます!!! (2019年7月2日 22時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。このお話更新されるとすごい嬉しくなります!笑今後の展開も楽しみです◎更新、fruitさんのペースで頑張ってください! (2019年7月1日 23時) (レス) id: bcb759c156 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - ハバネロさん» コメントありがとうございます!!前作から...とても嬉しいです!元気が出ます!!(笑)是非色々と予想を立てながらお楽しみください!ミステリーを書くのは初めてなので不安もありますが...どうぞ応援宜しくお願いします! (2019年6月8日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年6月7日 23時