第32話 ページ33
少女以外、口を開けられる空気ではない。
少女は下を向いたまま言葉を続けた。
「家族と、もう一緒にいられないから、全くの他人と過ごそうと思ったのです。私には、もう誰も頼れる人がいないんです...。」
涙を堪えているのか、少女は声を震わせてそう言った。
強気で知識があると見える彼女も、やはりまだ幼くて、主人と妻にはどうしてもまだ頼りない子供にしか見えなかった。
主人が優しく声をかけようと、1歩前にいざり出ようとする。
しかしその瞬間
突如少女は顔を勢いよく上げ、涙を浮かべて強い声で叫ぶように言った。
「迷惑はかけないようにします。それでも、迷惑はかかるものだと思います。重々承知しています。それでも、もう私には、あなたがたに頼るしか道はないのです。無理を言っているのもわかります。事情も説明できないのに養子に取れだなんて無茶だってわかってます。でもそれでも、私は、あなたがたを頼りたいんです。それしか、方法は無いんですっ...」
お願いします、お願いします、と、少女は土下座を続ける。
その背中は小さくて、少女が本当に窮地に追い込まれているということを物語っていた。
主人と妻は顔を見合わせると、同時に少し頷いて少女を見た。
「君が言いたいことはわかったよ。ちょっと僕らにも考える時間を与えてくれないか。それまで君は別の部屋で休んでいてくれ。案内するから、ほら、顔を上げて。子供はそんなことをするもんじゃないよ。」
主人が土下座を続ける彼女に声をかけると、少女はゆっくりと顔を上げ、小さな声でありがとうございますと言った。
そして妻に支えられながら立ち上がると、案内されるがままにリビングを出ていき、2階の子供部屋に連れていかれた。
妻は再びリビングに戻ってくると、主人の真横に座った。
「彼女は...大丈夫かい?」
「ええ。相当疲れているようよ。ベッドに寝かしたわ。」
主人はそうか...と言うと、妻の顔を見て眉尻を下げた。
「さて、君はどう思う?彼女を子供として迎えるか、このまま見捨てるか。」
主人がそう言うと、妻は心外だといった顔をして言った。
「見捨てるだなんてやめて。そんなつもりはない。ちゃんと彼女に段階を踏んでもらいたいのよ。話はそれからよ。」
妻の言葉を聞くと、主人は机に体重を任せながら言った。
「そうだよねえ...。僕も彼女にはちゃんと話を通させて欲しい。家族はいなくても、然るべき人はいるはずだよ。とりあえず、その人だけでも。でも...」
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fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (
レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます！すんごい面白いし、好きです！！ (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fruit | 作成日時：2019年3月4日 22時
