第30話 ページ31
「春美ちゃんは...立派な推理人だね。いや、探偵とでも言おうか。とにかく、頭が上がらないよ。」
泣き崩れる凜のお母さんの背中を擦りながら、凜のお父さんは哀しい笑顔でそう言った。
私は何も言わずに返事を待った。
肯定か否定か、はっきりするまで待とう。
何時間かかってもいいから、この疑問だけは解決しよう...
凜のお母さんの泣き声だけがリビングに響く。
凜のお父さんは顔を崩さないまま、凜のお母さんに優しく声をかけた。
「お母さん。もういいだろう?凜に言われて正直に黙っている必要は今はないと思うよ。春美ちゃんがせっかく掴んでくれた真実だ。僕達も協力しなきゃ。」
凜のお父さんは、そう言いながら凜のお母さんの背中をさする。
彼の言葉を聞いた凜のお母さんは、肩を震えさせながらゆっくりと顔を上げ、私を見つめた。
私は背筋を伸ばし、凜のお母さんを見つめ返す。
少し沈黙が流れたあと、凜のお母さんはおぼつかない唇を動かした。
「私はっ...凜に...なにがあったか知りたかった...。でも...あの時、あの時凜があまりにも必死で...苦しそうで...真剣な目をしていて...私たちしか信じられないというような状況で...あんなにまだ幼くて子供なのに...何を聞いても1人で抱え込んで...それでも...凜が私たちを絶対的に信じていたから...どうしても確認できなくて...やっぱり...無理にでも調べるべきだったのよね...。」
凜のお母さんはそこまで言って、再び顔を下げて涙を流す。
これは肯定と捉えるべきか
でも、はっきりと答えられた訳でもない。
凜のお母さんはまだ何か言いたげで、震える自身の体を必死に押さえつけて言葉を発そうとしていた。
凜のお父さんはなお、彼女の背中をさすり続けている。
「お父さんっ...もう、もういいのよね、蓋を開けても...」
崩れた顔で、凜のお母さんは凜のお父さんを見てそういった。
凜のお父さんは再び哀しく笑い、小さく頷いた。
「うん。せっかく春美ちゃんがきっかけを作ってくれたんだ。今が一番いいタイミングなんじゃないかな。」
二人の会話に、私は入れない。入ってはいけない。
言葉もなく心を通わす二人を見つめるだけで、何も言わなかった。
少し経つと、凜のお母さんも落ち着いてきて、話せるぐらいになった。
すると凜のお父さんは、まっすぐ私の顔を見つめてぽつりぽつり、と話し出した。
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます!すんごい面白いし、好きです!! (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:fruit | 作成日時:2019年3月4日 22時