知ってはならない。

第2話 ページ3

凜がいなくなってから2週間が経った。
容赦なく学校生活を強要され、立ち直れずに今に至る。


ここ最近は、ずっと川上君と話している。

彼もまた、大好きだった彼女である凜を失った悲しみから立ち上がれていなかった。

「修って笑顔で呼んでくれるあの顔が、あの優しさが、大好きだったのに...なんでだよ...。」

今にも泣きそうな声でそう言った。

「川上君も、凜が命を捨てた理由に、心当たりないの?」

私がそう聞くと、川上君はゆっくりと顔を上げた。

「ああ、2週間ずっと考えたが、やっぱり見つからない。いつも楽しそうで、笑顔で、優しかったから。」

川上君はそう言うと、再び口を震えさせながら机に突っ伏した。

「そっか...。」

凜から、悩みなど相談されたことはなかった。
何度も家にお邪魔したけど、両親もとても優しそうで、仲も良さそうだった。

学校でいじめられているということもない。
学力や運動能力もそこまで劣っている訳でもなく、普通に学校生活を送っていた。


それなのに
それなのにどうして



もちろん事件性も事故性も疑った。
でも、警察は、自ら飛び降りたとして処理した。
遺書は、なかったらしい。



凜が命を捨てなければなかった理由
あの眩しい笑顔を消し去らないといけなかった理由


どうしても、知りたかった。


凜とは、高校で出会った。

私は遠い中学から引っ越してきて、来たこともない土地で高校生活を送るのがとても不安だった。

もちろん、知り合いなど一人もいない。

これからどうしようか、と悩んでいるところに、凛は現れた。
笑顔で、優しく、声をかけてくれた。

「自己紹介聞いてびっくりしたよ。春美ちゃんがいた中学、親戚関係でよく行く地域なの。遠い所から大変だねぇ。地元トークでもしちゃおうよっ!」

嘘はついていないようで、ほんとに、私の地元のことをよく知っていた。

そしてその話をきっかけに、いつの間にかたわいもない話をし、いつの間にか行動を共にし、いつの間にか1番の友達になっていた。

凜がいなかったら私の高校生活はどうなっていたか。

彼女が優しく笑うあの表情が私は好きだった。
人を包み込むような、あの笑顔。




でも

その大好きな笑顔は

ある日を境に突然消えた。




「...川上君。」

私が呼ぶと、彼は再び顔を上げた。

「私、凜が命を捨てた原因、見つけるね。」

川上君は目を大きく見開いた。

そして、驚きながらも、うん。と返してくれた。

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