第52話 ページ11
No side
「もう帰るか?」
ミオがそう切り出すと、レナは少し驚いた顔をした。
「もう?」
レナの意外な反応に、今度はミオが驚く。
「なんだよ...」
「これでもう十分?話し足りないことないの?」
「話し足りないこと...」
わかっている。
話し足りないこと。
お互いの正体のことだ。
すでに、正体がばれていることはわかっているが、はっきりとそれを確認し合ってはいない。
レナは微笑して話し出した。
「私の・・・そうね、直感で。私の直感で、リベラが王女であることは、出会ってすぐにわかったの。」
「だってそれを知っていて同じ学校に行ったから」
レナは不服そうな顔をする。
「今はその話はしないの。私をあくまでも1生徒としてみて。」
「誰かを消すとかいう奴をなぁ。」
レナは一言うるさい、と言って続けた。
「でもリベラは王女だってことをみんなに必死に隠してて、きっと半端じゃないほど女王になりたくないんだなって感じたの。」
ミオが頷く。
「だから、誰かに確認したくなかった。もしもリベラに、私が正体を知っているなんて言ったら、きっとリベラはこの学校を辞めてしまう。そう思ったの。もし辞めてしまったら...リベラはどうなるの?女王にはなりたくない。でも、学校という名の逃げる場所がない。そんな状況に私は追い込むことになる。」
ミオは何も言わずに、ただレナの顔を見ていた。
「言えなかった。怖かった。リベラに嫌われることが。私は、所詮弱い女だって、ずっと思っていた。けど...」
レナはそう途切って、ミオの方を向いた。
「弱くたっていい。誰かに支えてもらっていいんだって、今日わかった。ミオに話してすっきりしたよ。1人で抱えるよりずっと楽。」
そう聞いたミオは、とても穏やかに笑った。
「それならよかった。」
「うん。ありがとう。
「帰るか?」
「そうね...。帰ろっか。」
レナがそう言うと、2人は立ち上がって少し歩いた。
「そんなグシャグシャした顔で帰ったら皆なんていうか。俺が言い訳してやろうか。家まで送ってやるぞ。」
「いいよ。遥か遠くだから。」
ミオはふっと笑った。
「・・・そうだな。遥か遠くだな。」
「じゃあ、また明日ね。」
「ああ。」
そう言って2人は別れた。
その後翼が羽ばたくような音が聞こえたのには、2人とも気づいていた。
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fruit(プロフ) - アリスティーナさん» 嬉しいコメントありがとうございます!!こんな昔の作品を掘り起こして頂いて、しかもそんな素敵なお言葉ありがたい限りです...少しずつ暇を見つけながらまだまだ修正していく予定ですので、もっと上手くかけるよう頑張ります。コメントありがとうございました! (2021年6月1日 17時) (レス) id: 9e79a81734 (このIDを非表示/違反報告)
アリスティーナ(プロフ) - 面白いです!!!!書き方教えて頂きたいくらいです!! (2021年5月31日 12時) (レス) id: c1ac6cc63c (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - あいさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません...!とても嬉しいお言葉、本当にありがとうございます!少しずつ直しておりますので、もっと素敵なお話にできるよう頑張りたいと思っております。どうぞこれからもよろしくお願いします! (2021年2月27日 4時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 素敵な話ですね (2021年1月19日 17時) (レス) id: 1883dbefc1 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 月夜桜さん» おおーーありがとうございます!とても嬉しいです!! (2018年1月14日 19時) (レス) id: 1c29b9fd37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2016年8月11日 0時