「また来てくださいね」 ページ3
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離島の港は賑わっている。
四日間の静養を終え、回復した私は、南十字船隊に再び璃月まで送ってもらうため、港にやってきていた。
元の滞在計画より一週間近く延びてしまったし、神里屋敷のみんなに迷惑をかけてしまった。
「ほんまにもう発つん？ もうちょい留まっていかへんの？」
「うん……ごめんな宵宮、大事な人が待ってるんだ」
「うーん……ほなしゃあないな。ところで、線香花火、十本ぽっちでええの？」
「打ち上げ花火もあるからな。足りなくなったらまた来るよ」
宵宮と別れを済ませ、
「また来てくださいね」
「次は鍋遊びをしよう。また来てくれたら、若もきっと喜ぶ」
「ああ。お世話になりましたって、綾人さんに伝えておいて」
綾華とトーマに別れを告げ、
「じゃあ、またな。裟羅と、早柚と、心海と、ゴローと、神子と、影さん……雷電将軍に、よろしく！」
そうして、『死兆星』号に乗り込んだ。
船が出る。
みんなの姿が見えなくなるまで、手を振る。
三週間ぶりの船員たちは、みな気さくに迎えてくれた。
北斗も相変わらずの豪快な笑い声を響かせながら、久しぶりだなと私の背中を叩く。ついでに酒甕を握らせてくれる。
私はその酒に口をつけ、頬を撫でる海風に目を閉じた。
「聞いたぞティア。ファデュイに捕まって、海に沈められたんだって？」
北斗が笑いながら言う。
「死ぬかと思ったね。というか、早柚が助けてくれなかったら確実に死んでた」
「ハハハッ、ファデュイに目をつけられるなんて、あんた一体何をしたんだ？」
「何もしてないよ……」
尋問されたときの記憶は、曖昧としている。
確か……『アランナラ』について聞かれて、そのあと……
「おれが何代目なのか、とか聞かれたけど」
「なんだ、あんた世襲貴族か何かか？」
「いや、孤児だよ。親の顔なんて見たことない」
あの『博士』は、私の名がどのように付けられたか聞いた。私の名前は兄が付けたものだが、由来は教わっていない。
名前の由来が手がかりになる。
そして、おそらく私は何かを継承している。
それが名前だけなのか、他の何かも含まれているのか。
……ナヒーダなら、分かるかな。彼女の知恵は深いから。
あるいは、鍾離も何か知っているかも。だって彼は、私の推測が正しければ、岩王帝君そのひとなのだから。
「ティア殿！」
万葉が嬉しそうに駆け寄ってきた。
手を掲げて応え、笑いかけてやる。
さあ、帰ろう。
愛しい知恵の国へ。
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
