189、帰路につく ページ30
「すまん、親父……助かった」
「お前は仕事中携帯の電源を切る癖をなんとかせんか。今みたいなことが起こったらどうする気じゃ全く」
「おうおう、親子じゃなぁ」
地に伏すシルバと、それを見下ろして説教をかますゼノに声をかける。ちらりと此方に視線を向けたシルバが、あんたか、と呟いた。
「怪我はどうじゃ」
「両肩と肋骨、左足をやられた。内蔵も少し損傷しているが、使えなくなることはないだろう……あの女、化け物だな」
「あれでも手加減はしておったようだがの」
「だろうな。あの練の状態で本気だったならとっくに再起不能になっていたはずだ」
死んでいたかもしれないと言わないのは、それだけは何としても避けるという矜持の表れだろう。
骨折の応急処置をするゼノにシルバが目を向けた。
「親父、イルミを連れてきただろう。あいつは」
「あやつはあの娘の所だ。もしもの場合の保険に連れてきた」
「……そうか。あの女は家に入れられると思うか?」
「わからん。ネテロ、お主はどう見る」
なんとなく予想はしていたが、やはりゼノに話を振られた。
ゾルディックの家にソフィアが入るか。この場合こやつらが真に問いたいのは入るか入らないか、ではなく、家を裏切らないかの一点だろう。
「答えは”どちらにも転がる”とだけ言っておこう」
あれは、良くも悪くも自己中心的だ。家を第一とするゾルディックに馴染むには、あれがゾルディックの家の者を重要視する必要があるだろう。
「俺は、余計なことをしたようだな……。何の影響もないと良いが」
「大丈夫じゃろう。道理もわからん奴に育てた覚えはないわい」
シルバの危惧は杞憂と言える確信があった。
今回こやつが敵として認識されたのは、恐らくあの青年を攻撃したからだろう。青年がソフィアを庇ったせいであるとはいえ、青年を害したシルバを許すことができなくなった。
しかし、ソフィアはシルバが自分を狙う理由にも理解を示していたのだろう。でなければ追っ手を放置し、あまつさえあの状態で無意識に手加減などせぬ。
「息子に伝言でも残して家に戻れ。それが今お前さんができる最善じゃ」
「ああ……協会に向かう船も手配しておこう」
「ほっほ、ありがたく利用させていただこうかの」
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ユウ - 一気読みさせてもらいました。応援してます。ヒソカ落ち希望です! (9月18日 1時) (レス) id: 9180eb740d (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 更新待ってます!!続きがとても気になります!!イルミ落ちがいいです! (2022年6月6日 0時) (レス) @page32 id: b76b8db090 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 作品読ませていただきました!!とても面白くてこのシリーズ大好きです!もし、この作品がまだ更新されるのであれば、気長に待ってます!頑張ってください!! (2021年1月30日 18時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 初めて作品を読ませていただきました!私はこのシリーズがとても大好きになりました!もし、作者様がこの作品を覚えているのであれば更新されるのを楽しみに待っています! (2021年1月1日 21時) (レス) id: 5e84d40654 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - このシリーズ大好きです!更新待ってます! (2020年3月24日 18時) (レス) id: 94544c805e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年9月4日 4時