１８５、そして三人も舞台へあがる ページ26
「詳細は言えんが、お主は最終試験でのアレを知っとるじゃろ」
「うん」
「屋敷から脱出する際にも幾つかの能力を見たじゃろう」
「うん──見た」
髭を一撫でし、ネテロはどこか遠くを見るような目で話す。
「あれは、奴の本気ではない。奴は怒ってすらもおらんかっただろう」
「……うん、怒ってなかった」
イルミの記憶にいるソフィアは、おおよそ怒りというものを見せなかった。
最終試験でこそ怒っているような様子は見せたが、直接イルミに向けていたかと言われれば首を捻るくらいのもの。
そして、ネテロの記憶にいるソフィアもおおよそ怒りというものを見せなかった。
何故か……答えは単純だ。怒りという感情を育む環境にいなかったから、である。
通常、生物は感情に近い感覚を有している。尾を踏まれた猫が踏んだ相手を忘れないように。
けれど、ソフィアというものは恐らく感情というものの殆どを育まなかった。敵なら殺して喰う。それ以外なら放っておく。毎日寝て起きて喰って寝ていたとネテロは本人から聞いた。
食事の際に喜びなどは育んだのだろうが、およそ怒りや悲しみなどの感情はネテロが彼女と暮らしていた時にも見せることがなかった。
気に入らなければ殺す。単純明快だからこそ感情との付き合い方についてソフィアは無知だ。
最終試験で我慢こそ見せたものの、感情と直面したアレがキレればどうなるか……ネテロは考えたくもない。
「シルバはあやつの逆鱗に触れる可能性がある。だから今こうして、そうなる前に制止しに行くというわけなのじゃよ」
「……爺ちゃんだけじゃダメなの？」
「手遅れだった場合、どうなるかわからん。わしとお主は保険じゃ」
ふぅんと返答して、何かを考え込むようにイルミが床に目を落とす。
「ソフィアのことを知れるのは嬉しいけれど。どうしてオレも連れてきたの？」
「知ってほしいのさ。アレは、お前さん達が本当に欲するに値するのか。お前さん達が何を欲しているのか、をな」
「……ソフィアは何者なの」
「儂からは言わん。ハンターらしく、お前さん自身が追い求めて見つけてみるんじゃな」
静けさが辺りに広がる。もう誰も何も喋らない。
何故なら、最悪の予感が現実となろうとしていることを肌で感じ取ったから。
念能力者なら一度は相対しただろうそれ。練と呼ぶもの。シルバのオーラが既に臨戦体勢に入ってると知って。
直後、悪寒が三人を襲う。半ば反射的に練をしたその瞬間。
飛行船が、揺れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 333人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユウ - 一気読みさせてもらいました。応援してます。ヒソカ落ち希望です！ (9月18日 1時) (
レス) id: 9180eb740d (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 更新待ってます！！続きがとても気になります！！イルミ落ちがいいです！ (2022年6月6日 0時) (レス) @page32 id: b76b8db090 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 作品読ませていただきました！！とても面白くてこのシリーズ大好きです！もし、この作品がまだ更新されるのであれば、気長に待ってます！頑張ってください！！ (2021年1月30日 18時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 初めて作品を読ませていただきました！私はこのシリーズがとても大好きになりました！もし、作者様がこの作品を覚えているのであれば更新されるのを楽しみに待っています！ (2021年1月1日 21時) (レス) id: 5e84d40654 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - このシリーズ大好きです！更新待ってます！ (2020年3月24日 18時) (レス) id: 94544c805e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クロ | 作成日時：2019年9月4日 4時
