秘密の存在４【H×H】 (ページ34)

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１５４、全ては蜘蛛のためにページ34

【フェイタン side】

敵の念にかけられたのだとすぐにわかった。
目の前に広がる光景は自分の物なのに、身体が思い通りに動かないから。

殺せ

ずっと響いている声がする。煩わしい声だ。
首を跳ねたのは失敗だったなとぼんやりと思う。まさかアイツの影を踏むことが発動条件だなんて思わなかった。

殺せ

身体はやはり思い通りに動かず、目の前の光景ではワタシの様子を見ようと近付いたノブナガを斬った所だった。
感触でわかる、決して浅い傷じゃない。とどめを刺そうと動くワタシをウボォーギンが押さえ込んでくれてひと安心した。
無事に今回の獲物を盗んできたシャルがあわてふためいている。お前の調査不足よと言いたくなったが、さすがに自分も悪いので黙っておく。喋れないけど。

殺せ

この響いている声はきっと念が発してる命令なのだろう。身体はずっとウボォーギンの拘束から逃れようともがいているし、練まで使い始めた。
そんなことしても本気のウボォーギンの拘束からは逃れられないのは知っている。
下手に傷を与えると念能力使うかもしれないしそのまま拠点に帰って団長に、とかシャルが言ってる。

(馬鹿ね、これ死者の念。ワタシ助からないよ)

何助けようと動いてるんだ、と思う。けれど身体が自由にならないから意思を伝えることも出来やしない。

(足手まといになるぐらいなら死ぬね。ワタシ達死ぬの仕事の内よ)

拠点の中では団長がコートのポケットに手を突っ込んでワタシを見つめていた。練の状態のまま近づいてくる仲間の気配に異変を感じたのだろう、手には団長の念能力である《盗賊の極意》がある。

ころせ

本当にしつこい声だなと思う。ワタシみたいなただの手足一本ごときが命令を下す頭とその支配下に置かれている手足達に敵うはずない。
団長は事の詳細を皆から聞くとシャルに見張りを任せて覚悟を決めたような目でワタシを見た。

(団長の手にかかて死ぬの光栄以外の何物でもないね)

死ぬことは仕事の内。けれどどうせなら仲間に切り捨てられて死にたいとも思う。蜘蛛のために死ねるのだと、そう実感できるから。
雨が降り始めたらしい。広間に入ってくる水がワタシとウボォーギンの身体にかかる。

ふと団長が視線を外してワタシの背後を見た。フィンクス達が帰ってきたようだ。
ということはあの女も帰ってきたのかと少しだけがっかりした。部外者に蜘蛛としての領域を踏み荒らされたくないと思った。