151、雨が降る ページ31
旅団の拠点がある廃墟群が見え始めると同時に鼻先に雨が一粒落ちてきた。割りと大きめの雨粒だ、どしゃ降りになるかもしれない。
「走る?」
「や、ちょっと。……なんだろうね、気配がおかしい」
目付きを鋭くしたマチが拠点の方向を睨む。パクノダとフィンクスもそれまでの明るい雰囲気を消失させて、気配を探り始めた。
同じようにして探ってみると、なんとなくだがピリつく感覚がする。クロロ達に連れてこられた時のような静かで人気のない場所とは違う。
「フィンクス、アタシとソフィアに荷物寄越しな」
「おう。おい、俺から離れるなよ」
マチの意図を正確に読み取った彼は短く返事をするとそれぞれに荷物を差し出した。
フィンクスが持っていた荷物を受け取り、言われた通りに彼の側に寄って歩く。不透明な要素に対しての連携が取れているところはさすがだ。
近づくにつれて違和感は明確になっていった。最初にフィンクスが、続いて私とマチが入る。
拠点に入った瞬間にまるで不穏さを強調するように雨足が強くなり始めた。
「どういうことだ、これはよ」
天井に空いた穴のせいで広間も雨が入っている。その中でウボォーギンが雨に濡れるのも構わずに、抜刀した状態で殺意を露にするフェイタンの腕を持ち押さえ付けている。
ノブナガは着物の脇腹が切り裂かれて血が滲んでおり、決して浅くない傷がその下にあることが窺えた。
昨日までの平和な光景とは見る影もない。
「帰ったか」
「団長、何があったってんだ」
「フェイタンが敵の能力にやられている」
曰く。敵が雇った”影法師”は操作系の念能力者らしく、フェイタンは能力の発動条件を満たしてしまったらしい。
「だったらその能力者を探し出せばいいじゃないか」
「無駄だ。発動した直後にフェイタンが首を跳ねた。そのせいで死後強まる念になっている」
「そんな……!」
死後強まる念。文字通りの意味なら、死後に念が強まる……生前かけた念が強化される、ということなのだろうか。
敵は操作系念能力者。つまり。
「じゃあフェイタンは……!」
「ずっとこの状態と考えて良いだろう。シャルナークの見立てによると幻影旅団、もしくは能力者の敵を殺す命令がかかっているらしい」
「なんとか出来ないのでしょうか」
問いかけるパクノダにクロロは静かに首を振った。
「無理だな、操作されているものを操作することはできない」
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作者名:クロ | 作成日時:2019年6月1日 15時