秘密の存在４【H×H】 (ページ21)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:69,753 hit

１４１、不可解な苛立ちページ21

【フェイタン side】

一人になっても解消されない苛立ちに舌打ちひとつが森の中に落ちる。
いっそあの女を殺せたら、どれほど気が楽になるだろう。団長は咎めるだろうが、所詮は蜘蛛ではない人間。最終的には許してくれる。

だが。団長の命令は絶対だ。
頭が客として迎え入れると言うなら、手足はそれに従うのみ。客として相応しいかを試す自由は与えられても、頭の命令に反する動きをする自由など手足にはない。

(……気に入らない)

正直言って、どうしてこんなにも苛立っているのか自分ですらわからない。
自分が負けたからか。あの女が生意気だからか。仲間が受け入れ始めているからか。

きっとどれもだ。全てが癪に障る。
負けると思っていなかった。練をせず纏だけで向かってくる相手に、誰も負けるなどと思わないだろう。
それに、ワタシの練を受けても平然としていた。最初のフェイントこそ食らっていたものの、次からは対応する速度が格段に速くなった。

タフさがあり、力があり、度胸もある。
発言は生意気だが、あの女は蜘蛛と対等になれるだけの自分の価値を示した。それは認めてやらないでもない。
だけど、団員でない以上いつ敵となるかわからないのだ。そんな相手にわざわざ力を与えるような真似はしたくない。

(気に食わない)

そんな存在に、一瞬でも自分が魅せられたことが気に食わない。
あの女がヒソカのお気に入りであることも、自分が気に入ってしまいそうなことも。

ヒソカの味方をされる前に蜘蛛に取り込んでしまえばいいのだが、あの女自体が味方になる確証もない。

(ていうか、空き番ないよ)

蜘蛛に取り込むために蜘蛛が犠牲を出すのはそれこそ本末転倒である。
だから団長は客として招き入れたのだろうし、そうされるだけの価値があることは証明されたが気に入らないものは気に入らない。

ぐるぐると考えているワタシの懐で、携帯が鳴った。
通話の着信が入っている。相手を見れば、シャルからだった。

気分的には出たくないが、シャルの連絡は仕事に関する事柄もある。無視すればネチネチ言われることになるだろう……というか、以前なった。

「何か用か」

”あ、出た出た。良かったー、明後日の仕事のことなんだけどさ”

「なんかあたか」

”ちょっと強そうなのがいてね。マチと交代して前線行ってほしいんだけど”

強い相手がいるなら気晴らしにちょうど良さそうだ。思いっきり暴れてやろうと考えて、笑みを浮かべる。

「いいよ、いてやるね」