121、数奇な運命 ページ1
【ソフィア side】
入場してから随分と経つ。もっと言えば、セイが突然姿を眩ましてからも随分経つ。
パーティーの開催者の言葉や声をかけてくる招待客の話を纏めると、どうやら明日このビル内部で行われる美術展覧会への招待状を配るために開かれたパーティーであるようだ。
何故直接その招待状を送らないのかというと、防犯目的なのだそうだ。
ただの立食パーティーということにしておけば、そこで展覧会の招待状が配られるなんて思いもよらないだろうとのこと。このビル自体が招待されなければ入れないのだと聞いた。
(警備が優秀ということなのかしら)
それとも単に招待されていない客はお引き取り願っているだけかもしれない。なんて考えていると、不意に腕を引かれてつんのめる。かと思えば、布の擦れる音が背後でして──僅かな気配を感じて避ければ、目を見開いて驚くセイの姿があった。
「……えっと。何のつもりかしら」
「避けれるんだ……ってそうじゃない。今すぐ気分が悪いふりして!」
小声で演技の要求をしてくるセイの無茶ぶりに返答する間もなく、彼は私の腰をとり心配そうな表情になった。
「大丈夫? 人に酔った? ごめんね、少し長く居すぎた。すみません、お先に失礼します」
周囲に頭を下げながら流れるように腰を引いて出口へと向かう彼に、思わず目を細める。
今の攻撃からしても、もうただのお金持ちの子息のようには思えなかった。此方がその事実に気付いたことはあちらもわかってるのだろう、パーティーホールを出た瞬間に彼は無表情になる。
「……俺が怪しいことには気付いてるよね。なんで抵抗しないの?」
「強いて言うなら流れるように先導されて抵抗する暇もなかったのと、報酬を貰ってないからかしら」
本当に気付きはしたものの抵抗しようと思う暇もなく扉の外だった。演技の要求に気を取られて反応すらできなかった。
「はぁ、まぁ目的は達成できたから良いけどさ。君って変わってるって言われない?」
「言われたことないわね。ところで……」
エントランスホールに足を踏み入れた瞬間、血の香りと共に数人の視線が注がれた。
着物の男、フェイタン、運転手だった男。着物の男は私を見て目を見開き、そして。
「団長、シャルが来たぜ」
「シャルナーク、早く退散する……、」
「貴方……」
「お前……」
ヒソカやイルミと出会ったときに見た顔。クロロが、そこに立っていた。
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作者名:クロ | 作成日時:2019年6月1日 15時