108、闇人形が動き出す ページ28
「奴を殺せ、イルミ」
答えられず思考を巡らせるオレの耳に届いた言葉。理解するまでに時間がかかった。
「ナニカが感知したということはあの女もナニカの存在を知ったかもしれん。奴が未知数である以上、それ以外に道はない。オレ達に危害が及ぶ前に殺せ」
「ソフィアが持つ能力は究極の自己治癒。死からも蘇る。危険な能力じゃないよ」
今までに見たことを全て話すと、親父は暫く考え込んだ。
「それだけだという確証はない。獣の目の下りだけ能力が判明していないし、直後に嫁候補にしようと思ったんだろ?」
「それは遺伝する力だから嫁にしようと思っただけだし、ソフィアは目を隠そうとしてた」
「だとしてもお前が奴の能力にかけられてないという証明も欲しい。死ぬということは少なくとも不死ではないんだろ、ならばいつかは治癒出来ずに死ぬ」
親父も、ソフィアの蘇りは限定的であると踏んだらしい。
親父の言うことはもっともだ。オレが能力にかけられていないなら、ソフィアに刃を向けられるはず。
ソフィアを殺したくないと思うのに、その思いが本物なのかがわからない。本物だったとして、それが証明されるのはソフィアが死んだ時。
その時オレは……何を思う?
「操るのは、ダメなの」
「ナニカのような力だった場合を考えろ」
逃げ道は、塞がれた。もう抗える要素が何一つとしてない。殺さなきゃいけない。
でも、でも、でも、でも。
「イルミ、お前はオレにどう育てられた。お前の家はどこだ?」
オレは闇人形。自身は何も望まず、何も欲しがらない。そう、育てられた。
オレの家はここ。唯一、この家だけがオレの居場所。一族のためにこの身は存在してる。
「……うん、わかった。殺すよ」
「よし。聞けば七の門まで開けたそうだな、仕留め損ねたら屋敷の外に追いたてろ。オレと親父も動く」
「……やれやれ、骨が折れそうじゃな」
殺さなきゃ。真っ白な頭の中にそれだけを思い浮かべる。
「キキョウはミルキと部屋で監視しろ。奴が逃亡したら位置を把握してオレ達に送れ、異変の欠片も逃さずな」
「わかったよ」
「行け、イルミ」
踵を返して部屋を出る。行かないと。殺すために。
いつか甦らなくなって、屍が動かなくなるまで。
殺さないと。殺すために生まれたんだから。
93人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時