103、淡い想いの種宿る ページ23
【ソフィア side】
「オレがやるから解毒剤ちょうだい。食事は机に置いて、食べたら呼ぶから下がって」
くわりと歪む意識に、イルミの声が聞こえる。残念ながら内容は聞き取れず、また理解しようにも頭が働かない。
外と内が切り離されているような状態だ。今思考している意識は、外の状態だけ認識することが困難になっている。
意識は朦朧としているけれど、微かに起きているから獣性が発動することはない。本当は今すぐにでも眠って発動させたい。のに、ぐわんぐわん目の前が揺れている感覚が目を閉じていても襲ってくるせいで眠ることが困難になっていた。
ひやりとした感覚がして、イルミが腕に手を乗せたのが揺れる視界で見えた。
「注射で解毒するからじっとしてて」
手にある物には見覚えがあった。かつて自分が此方に来たばかりの頃、よく私の腕から血を抜き取っていたもの。中には、黄色い液体が入っている。
何を言っているのか聞き取れないけど、倒れたときの反応や運んでいるときの細い声音からしてこの状況はやっぱり想定外だったんだと思う。
だから助けようとしてくれているんだと信じて、私は小さく声を漏らした。
「……っ」
腕に小さく鋭い痛みが走ったのを感じる。思わず息を止めれば、イルミがちらりと視線を此方に移してすぐに手元に戻した。
「おしまい。多分聞こえてないと思うけど、持続時間の長い毒だし解毒は効くまで時間かかるから無理に動かないで」
するりと前髪を撫でられ、目を閉じる。手は二度三度額の上を往復すると離れていって、もう一度ゆっくりと瞼を持ち上げれば彼はソファーに腰を下ろし、食器を手に取っていた。
どうして此処に食事を持ってきたのかしら──思考を巡らせるも、思い付かない。
責任を感じてとかだったら申し訳ない。確か三次試験の時も助けてくれたような……あれは、一度は助けるって言葉を有言実行しただけだったかしら。
ならばやっぱり責任を感じて? 黙っていたのは私の責任だから気にしないと思うけれど。
イルミは黙々と食事を咀嚼している。音もなく食器を動かす様はさすがだと思う。
希薄ながらに、気配を感じることができるからか体の力が抜ける。なんとなくヒソカやイルミは傍にいると落ち着くのだ。
きっと、元々の波長が合うのかも。二人とも価値観や強さが一般人とはかけ離れていて、私を受け入れてくれたから。
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時