秘密の存在２【H×H】 (ページ5)

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４４、貴方を知るページ5

「クラピカ、ゴン達を見殺しにしてでも復讐できる？」

「っそんなこと、」

「出来ないでしょう？」

ぐっと唸ってクラピカが黙りこむ。
彼は出来ないだろう。孤独を恐れて孤独に身を置く彼ならば。

「……それは、できない。幻影旅団と同じになってしまう」

「ね、何故そんなこと言うの？幻影旅団だってそうだとは限らないでしょう？」

首を傾げて問いかければ、クラピカは即座に首を振る。

「それはない。奴等は団員を蜘蛛の足として扱い、死ねば補充する。仲間の死などに左右されないだろう」

「でも、実際見た訳じゃないのよね？」

「だがそう聞いた。……そうであってほしいと、願わずにいられないんだ」

クラピカが眉を寄せ、難しい顔をした。俯きがちになり、思考は此処ではないどこかへと向けられる。

「怖いんだ、いつかこの怒りが風化してしまうことが。一族の無念を晴らせずに、忘れて生きることも。だから、憎んでいたい。私が憎悪を向けていられるくらいに非道なやつらだと思っていたいんだ」

弱々しく微笑んで、膝を抱えてしまう。悲しげで寂しげな笑みだ。見ているこちらも、胸が痛くなるくらいの。
自分独りであったなら、躊躇なく崖を飛び降りてしまうような危うい人間だ。これ以上何を言っても、納得はしても聞きはしないだろう。

「色々と言ってしまって、ごめんなさい」

「いや、いい。復讐を止めようとは思わないが、視野は広がった気がする」

「そう、少しでも体の力を抜く手伝いができたのなら何よりだわ」

笑顔を向ければ、驚いた顔をしたクラピカと目が合う。なんだかこの短時間で沢山驚かれてる気がする。
クラピカは少しじーっと私を見つめると、力の抜けた笑顔を浮かべた。

「参ったな、そんなにわかりやすかっただろうか」

「いいえ、なんとなくよ」

どちらともなく、笑い合う。すると、ゴンがゆっくりと起き上がって伸びをし始めた。

「ソフィア、クラピカ！おはよう！」

「「おはよう、ゴン」」

窓際に走りよって飛び付き、ゴンが外の景色を眺める。
クラピカに再び目を向ければ、彼も此方に目を向けた。私はゴンに聞こえないように声を小さくして、いつもより柔らかくなった眼差しのクラピカに言う。

「復讐なんてなくても生きられるようになって。もしも私が幻影旅団と出会って気に入っちゃったら、どっちも守りたくなっちゃうから」

何か言いたげなクラピカを無視して、私はゴンに声をかける。
三次試験まで、あと少し。