72、眩しいキミ ページ33
【イルミ side】
「それでもありがとう。あそこで脱落はしたくなかったの」
そう言ってソフィアは無防備な笑顔で信頼を向けてくる。
オレは暗殺者なのに。
「……そう」
「イルミは此処で過ごすの? キルアが来たりしない?」
「大丈夫。キルの行動範囲はオレがよく知ってる」
暗殺者として育てたのはオレだから、飛行船のどの辺りで生活すれば見つかりにくいかをキルはよく知ってる。それを逆手に取って動けば此方も見つからない。
どちらにせよ、万が一あいつのオーラが此処に近付いたら顔を変えれば良い。
「そういえば、同じ名字なんだものね。キルアのお兄さんでしょう?」
「そうだよ。キルに聞いたの?」
「ええ。凄いのね、貴方もキルアも他の人に比べるととっても強い」
「当たり前だよ、生まれが違うんだから」
まただ、さっきと同じ感覚。何か誉め言葉を口にされる度に、オレは変になる。かき乱されるような、なんとも言えない気分。
「生まれとかは関係ないわ。今ここに立ってるってことは、キルアから聞いたような訓練を耐えて鍛練を積んで生きてきたってことでしょう? だから、凄いわ」
それがオレらにとっての当たり前だから、とは、言わなかった。
よくわからない思いがぐちゃぐちゃに胸の中をかき回して、言えなかった。ただ褒められただけなのに。
(闇人形に、感情はいらないのに)
家とか生まれじゃなくて、ただのイルミとしてのオレだけをみてほしい、なんて一瞬でも考えてしまった。
「ねぇ、オレのものになってよ」
「だから、保留って言ったわよね?」
目を丸くして驚くソフィア。真ん丸になった瞳はオレの瞳よりもずっと綺麗な色だ。なんとなく、緋の目を欲しがったクロロの気持ちがわかった気がする。
「家のことも、オレのことも知ったでしょ」
「それ以外にも、好き同士じゃないといけないとかあるでしょう」
「オレはソフィアのこと好きだよ。ソフィアはオレのこと嫌い?」
こてりと首を傾げれば、彼女はうっと息を詰まらせる。
「好きだけど、男女関係のことは別! ただ人として貴方が好きなだけよ」
「……今はそれでいいや」
何度も好きって言ってもらえたことに満足してソフィアから離れる。
言う際に少しも瞳の揺れが見えなかったところをみると、彼女が男としてオレを見てないのは本当のようだ。
先は長いし障害は多いなと思いながら、オレは明日の試験内容に思考を向けた。
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時