61、私の在り方 ページ22
「動き回った後なのに本当にいいの?」
「いーよ、まだ体力余ってるから」
「あれしきでへばる程軟弱に訓練されておらんからな」
「いや、結構ギリギリだろアンタは」
「なにおう!?」
幾度もの手合わせ後であるというのに、元気に食料調達を手伝うキルアとハンゾー。
片方は疲れはててよれよれのヘトヘトの空元気だけども。
キルアとハンゾーの戦闘もまた気絶した方が負け、後を引く負傷は厳禁のルールで行われた。
今日までの結果はキルアの勝利。というか、ハンゾーは一度も勝てていない。ので、何回も行ってる手合わせはハンゾーの意地によって続いてる。
本人曰く、”女に負けても怒りは沸かんが子供に負けるのはさすがにムカつく”らしい。
薪と食べられる木の実を幾つか拾った辺りで、ハンゾーが魚を採りに野営地にしている川の下流へと向かった。
私とキルアも野営地を目指す。その道中で、キルアが静かにぽつりぽつりと話し出す。
「オレ、こんな体験したの初めてだ。打算とかなしに話したり、一緒にいたりするの」
「そうなの?」
「ああ。オレん家ゾルディックっつってさ、前も言ったけど暗殺一家。結構期待されてんだけどさ、嫌になって家出したんだ」
ゾルディック。……あれ、イルミの弟……?
そういえば、イルミは以前99番から隠れたいと言っていた。それが家出したキルアを追ってきてのことなら、納得できる。
うん、黙っておきましょう。
「ソフィアはどう思うよ、生まれで人生が決まるとかさ」
どこか探るように、キルアがこちらを見る。
「私はね、生まれ持った才能とか能力とかで他者に生き方を決められるのは馬鹿らしいと思うわ」
私は、獣だ。人に興味を持ってその中に混じりはしたけれど、それだけだ。生まれからして人間と違うし、性質からして人と相容れない。
でも。私の在り方を決めるのは、他人なんかじゃない。最終的に自分を決めるのは自分自身だ。
私は確かに獣として生まれたけど、それ以前に私は私だ。人に興味を持ち、人に溶け込もうとしている私の意思は此処にある。
誰にも私の在り方は決めさせないし、生まれに反する意思だとしても今の在り方を否定されたくはない。
それはきっとキルアも同じ。
「キルアはキルアでしょう? 生まれとか関係ないわ。貴方には貴方の意思がある」
「……ソフィアは大人だな。なんか、姉貴がいる気分」
「撫でてあげましょうか、キルアはいい子ねって」
「やめろ」
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時