52、不機嫌ふたり ページ13
【ヒソカ side】
イルミから気絶したソフィアを受け取って、ボクは元居た壁際に再び腰を下ろすと彼女を膝に乗せて胸元に寄りかからせた。
見れば、随分と血を吐いたような跡がある。パーカーはよれて埃っぽくなってるし、スカートなんかは一部の裾が切れている。
本当に何があったのか問い詰めたいけれど、今イルミは確実に不機嫌だ。
思考に入り込んでいるようで上の空ではあるけれど、話し声は普段より抑揚がなかった。
……まぁ、不機嫌なのはこちらも同じだけど◆
ボクが見てないところでソフィアが害されたのが、どうしようもなく気分が悪い。
今までどのオモチャにもこんな感情は抱かなかったのに。
悪化する気分を鎮めるために、ソフィアの髪に指を通して軽くすく。
彼女の髪は触り心地が良い。滑らかで艶やかで、するりと指を抜ける。
髪に当たる光の反射も綺麗だ。光源によって違う色合いになるし、光に透かせば薄紫が神々しさを感じる輝きを帯びる。
この部屋は少し暗いから、彼女の髪は重厚感のある紫に近くなっていた。これはこれで好きだ。
イルミの視線がさっきから痛いけど。
『第4号、294番ハンゾー!所要時間、12時間3分!』
「よっしゃー! 俺がいち」
手首の動きだけで投げたトランプは、狙い通りハンゾーの鼻先を掠めて壁に突き刺さった。
「怪我人いるから、静かにして◆」
「……はい」
「アト、トランプ返して◆」
「……」
トランプを壁から抜いたハンゾーが律儀に手渡ししに来た。
投げて返してくれれば良いのに。彼なら狙った位置から外すことはないだろうから。
「どうも◆」
「なぁ、そいつアンタの女か?」
口の横に手を当てて、声を落として聞いてくる。正直煩わしいったらない。
「ねぇ、ボク怪我人いるって言ったんだけど◆」
「? アンタはそこまで怪我してないだろ」
「この子だよ、見てわからないのかい◆」
威圧を込めて睨んでみれば、少したじろぎはしても離れはしなかった。
う〜ん、この男もやりづらい男だ。成長の幅があるだけに、殺すのも惜しい。
「いや、確かに血で汚れたりはしてるけどよ。嬢ちゃん無傷だろ、呼吸も健康そのものだ」
「カタカタカタ……それ、本当?」
ハンゾーの言葉に、イルミが反応した。
ボクも驚いて見下ろせば、さっきまであった打撲痕も消えてしまっている。
イルミとボクの動揺する気配を感じ取ってかハンゾーまで慌て始めた。
その騒がしさのせいで、ソフィアの瞼がぴくりと動く。
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時