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番外篇3-2 ページ33

『どこかに行きたいんですか?』


違う


『誰かを探しているんですか?』


それも違う


首を振り続ける俺に、Aは困り顔



『私は、白い猫を探してるんです

見ませんでしたか?』


それは俺だ、と頷く


『見たんですか!

教えてください!』


しかし伝わらなくて、Aは俺の腕を嬉しそうに掴んだ


……でも、探してくれてるんだな


テキトーに、こっちだと指をさす


どうせ半日で戻るんだから、それまで傍に居ればいいだろう




『……猫、銀時っていうんです』


草むらを掻き分けながら

Aは俺に向けて話し始める



『食べることが大好きで

ソファで眠るのがお気に入りで

私の大切な人が拾ってきた、大切な家族なんです』



だから見つけないと、地べたに這いつくばるように探す彼女の手や服は

土埃によって汚れていた


いいところの家庭で育ってたんだろうな、と俺にでも分かるよう彼女


高杉との暮らしでも、不自由はないだろうに


それでも、俺のためにここまでしてくれている


A、ありがとう

そう言いたくても口からは何も出ない


猫の方が、まだましだ



『A!!』


『晋助さん?』


見つかったか、とAに聞く


高杉は走っていたのか、呼吸が荒かった


コイツも、探してくれてるのか?



『A……』


俺が誰だか、小声で聞く

Aは俺を探すのを手伝ってくれていると、高杉に耳打ちした



『そうか、悪いな』


そう言った高杉は、少し先のところで木の上を見たり

Aと同じように雑草を掻き分ける


お前、ボンボンの癖に……


無性に、胸が熱くなった



『ったく、銀時どこ行ったんだよ』


文句を垂れながらも、俺を探している天邪鬼

その姿に、思わず笑ってしまう


『ごめんね銀時、怒っちゃって

ガラスの破片踏んだら危ないから、あなたを追い払っちゃった……』



今にも泣きそうな声で俺に謝りながら

Aは俺を見つけようと躍起になっている


俺は心のどこかで、自分は邪魔なのではないかと思っていた


Aと高杉の関係を取り持とうとしなかったと言えば嘘になる


泣いているAの傍にいて

高杉には、早く言えと睨みを利かせていたつもりだ


でも、もう二人は大丈夫だ


だから……


俺は、探してくるフリをしてあの公園まで走る


胸の鼓動が煩くなったかと思えば

たちまち身体が縮み、猫に戻ってしまった


これで、良かったんだ


もう諦めたかな、俺を探すの

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設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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油揚げ☆ - はじめまして!いきなりですが、お気に入り1000人突破おめでとうございます!このシリーズ本当に素晴らしくて綺麗で、心が洗われました!これからも頑張ってください! (2017年12月29日 23時) (レス) id: ea10ef1a5d (このIDを非表示/違反報告)
爽香(プロフ) - お気に入り、1000人突破おめでとうございます!!! (2017年12月26日 9時) (レス) id: a0739e61e8 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 湯葉さん» 他の作品も読んでくださっているんですか!? ああ、本当に有り難いです。どうもです。 続篇、土曜日なので楽しみに待っていてくださると嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年6月12日 16時) (レス) id: 31f39b2690 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 琉晟@遥さん» 初めまして! そんな嬉しいことを言われても何も出ませんよ!笑 とっても素敵なコメントをありがとうございます! コメント、本当に頂けると嬉しくなるのでこれからも遠慮せずにしてください!( ´ ▽ ` ) (2017年6月12日 16時) (レス) id: 31f39b2690 (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 初めまして。ハルさんの作品、どれもとても素敵でいつも感動して読んでました。こちらの作品の続篇もとても楽しみにしております。これからも頑張って下さい!!応援してます(^^♪ (2017年6月11日 19時) (レス) id: 78ddd75d3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory  
作成日時:2017年2月6日 16時

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