赤井秀一の悪友4th【名探偵コナン】

手招くための手薬練を ページ39

「でも派手に見張りを付けて焦って捕まえようとすれば、こうなる可能性がある事ぐらい…2人なら読めてたはずだよね？」

「さあ…どうだかな…」

『…来るよ』

両者の車が並んだ瞬間、あちらからの発泡が一回。車はすぐに速度を落とし銃弾を避け、後方から私も一発だけ追撃し、奴の車のサイドミラーが吹っ飛ぶ。すれ違いざまに奴の焦った表情がハッキリと見えたが…あの動揺っぷりは私の銃弾ではなく秀一の顔にだった気がする。刹那前方から響く乾いた音、そしてガードレールにぶつかり炎上する車。カーチェイスはすぐに終わりを告げたのだったーー。

『あー…これは奴さん息してないわ。残念』

目視、加えて手袋を嵌めて素早く脈を取って離れる。眉間を自ら撃ち抜いたらしい、敵を見る目だけはあったようだ。どの道、流すつもりも毛頭なかった。

「これで確実に奴らに知られる事になる…こいつは何らかの方法で潜入先の病院の調査報告を定期的に組織に報告していたはず…」

『端末も壊れ、本人も死んで報告は完全に途絶える…。もし報告(それ)が毎日の事だったとしたら、当然組織は怪しむでしょう。何かが起きたと』

「来るぞ、明日にでも…」

…奴らが。

ーーーー

それからというもの、FBI内はざわついていた。水無怜奈をどうするか…対策を迫られていた。

「ここに水無怜奈がいる事を組織に知られてしまう可能性がある以上、ここに留まる意味はありません！！議論の余地なんてないでしょ！？」

『…ジョディ、落ち着いて考えなさい。今の状況で彼女を移動したところで、リスクの方が大きいわ』

「そうだぞ、移動先の病院も決まっていない状況で、昏睡状態の彼女を闇雲に連れ回すのは…」

…それは彼女が、本当に昏睡状態だったら、だけれども。どちらにせよ、ここで動くのは逆効果だ。

「ただ待つんじゃない…引くんだよ…」

『…手薬練(てぐすね)を？』

「ああ…迎え撃とうじゃないか…はぐれた仲間を連れに来た黒い狼共を…」

生き生きしちゃって、まあ…。人の事は言えないか、私も何だかんだで燃えてきたし。

『とにかく、一度休憩にしましょう。交代でしっかり休んで、襲撃に備えるのが得策かと。このまま神経を尖らせ続けた所で、先に参ってしまうのはこちらだし。働かない頭程、使えない物はない』

「まぁ思いついたら報告に来ますよ…奴らを迎え撃ついい策を…」

颯爽と部屋を出て行く彼を追って、私も続いた。面白い程に落ち着いている、不思議と心は穏やかだった。

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