赤井秀一の悪友4th【名探偵コナン】

【番外編】お菓子か悪戯か(遅刻) ページ29

『秀一…Trick or Treat?』

ソファですっかり寛いでいる秀一に背後から抱きついて不意打ちをかける。一瞬硬直した彼が、タバコを咥えようとしたままの体勢でゆっくりこちらを振り返る。

「…今日だったか」

『そうよHalloween…忘れてた？』

完璧に忘れていたらしい。母国では大々的に仮装パーティーも開催される程の一大イベントなのだが、この頃は多忙でそれどころではなかったので無理もない。

「…生憎待ち合わせはないな。Trick please?」

『ええ、諦め早くない？もうちょっとくらい悩もうよ…』

「ここはあえて、honeyのお手並み拝見と思ってな？」

いつでもおいで…と余裕の笑みを浮かべて挑発する彼。そこまで言われては、私も黙ってはいられない。実のところ、仕込みは既に終わっているのだ。

『そのタバコ…ちゃんと咥えてみて？』

「ム…？」

『気付いた？』

怪訝な顔で彼は、咥えたそれを"噛み砕いた"。

「やられたよ…いつから仕込んでたんだ？」

『さあ、いつでしょう？』

種明かしをしよう…彼が手にした箱の中身は、全てココアシガレット、時々クッキーだ。しかも一手間かけてよりタバコに似せた甘さ控え目のお手製。因みに入れ知恵はコナンくんである…。秀一に内緒で作って、昨夜のうちに箱をすり替えたのだ。

「これではTrickもTreatも両方もらってしまったな…」

『ふふ…悪戯成功』

参った、と諸手を上げた彼に思わず拳を掲げる。甘い物が得意でない彼が黙々と咀嚼している様子から見て、甘さは上手く調節出来ているらしいと安心した。

「お前は食べないのか？」

『散々味見した…んむっ』

遠慮しようとしたが先手を取られた。彼が、そのまま私の口元にシガレットを当てる。最早条件反射のように口を開けた。

「俺にだけ食べさせるのは、不公平だろう？」

『…これ、結構カロリー高めなんだよ？』

「と言いつつ食べるんだな」

『食べ物に罪はないからね』

自画自賛だが、美味しく出来ていると思う。

「ところで、この決まり文句にも様々なバリエーションがあるのは知っているか？」

『…というと？』

「Trick so Treat(菓子をくれたから悪戯する)」

『理不尽じゃない？』

「Trick yet Treat?(菓子はいいから悪戯させろ)」

『…What?』

やはり俺はこちらだな…と満足そうに微笑む彼が頰に手を滑らせる。

「恋人としては、イベントに乗じてこうすべきかと思ったんだが？」

私は、彼の策にまんまと嵌まったらしい。

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大遅刻！！！！

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