Fomo Ⅲ (ページ7)

今日:13 hit、昨日:38 hit、合計:97,184 hit

・ページ7

.

　

　

　

　

「超甘やかしてくれる5人がいるから、恋人はいらない」

約3年前からそういう風なことを話していたA。さっきの楽屋での話からするに、この発言をし出す前にきっと彼氏がいたんだろうなと思う。
好きな女性の"恋人はいらない"発言を耳にする度、安堵と絶望とを抱いていた。

井上「彼氏ほしいなって思わないの」

「ええ、瑞稀まで何？」

撮影の合間、金魚すくいを一緒にしていたときAにそう言うとAはおかしそうに笑っていた。

「思ったことはあるよ」

井上「ふうん？」

「自分から振っといて興味なさそうにすんのやめてくれる？」

ケラケラと笑いながら、破れたポイをじーっと見つめていた。俺のポイも破れた時、Aと至近距離で目が合う。

井上「 A 」

「んー？」

井上「じゃあ、もしも。俺が彼氏になるって言ったら？」

「 ……いや、いい！」

井上「いや、いいって、何！？」

嘘だよごめんー、と全く謝る気のない声で形上謝ってくる。
割と真剣な顔したのに、Aからすればそれも効き目はなくて。ケラケラ笑っていたのに、ふっと見るとAは水槽で泳いでいる金魚を優しい眼差しで見ながら言った。

「恋人はいらないからさー、
　みんなとずっと一緒にいたいんだよね！」

Aの笑顔が、雲から差し込む太陽光くらい眩しかった。

　

　

　

　

.