D.gray-manー2人で歩く道 (ページ33)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:27,887 hit

番外編＊手料理① ページ33

ア｢ーーA、指どうかしたんですか？｣

『へ？』

食堂で食事を済ませ、いつものように2人で話をしていた時であった。

ふと、彼女の指にいくつか絆創膏が貼られているのが目に止まったのか、アレンはそんな質問を投げてきた。

『…ああ！これは任務で森に入った時に、木の枝とか植物の棘でケガしちゃってね～』

ア｢そうだったんですね。傷が残るほどじゃなくて良かった…｣

『ちょっと油断しちゃってて。案外植物の棘とかも痛いんだなあって思い知らされたよ～』

そっと彼女の指に触れながら、綺麗な手なんですから大事にしてくださいよ、と言葉をかけてきた。

『…うん！』

ア｢ーーあっ、そろそろコムイさんの所に行かないといけない時間でした！A、行ってきますね｣

『うん！気をつけてね、行ってらっしゃい！』

これから任務へと向かう彼の手をぎゅっと握り、笑顔で見送る。

…慌てながらも食堂を後にしたアレンが見えなくなると、ふぅーーっと大きく息を吐いた。

自然に見せていた笑顔も、今は力が抜けたかのような表情に変わり果てていた。

(…あっぶなかったああ………)

『やっぱり私、嘘をつくのは苦手なんだなあ…』

先程彼に気づかれた、両手の指に貼りまくられた絆創膏を見つめる。

付き合う前から知ってはいたが、彼は彼女の隠し事を容易く見破ってしまうのだ。
それは勿論、彼女への想いの強さ故にであり、非常に嬉しいことでもあるのだが。

(…今回ばっかりは、気付かれないようにしたいな)

Aが今回、何をアレンに隠しているのかと言うと。

ーー料理の練習をこっそりしていること、である。

なぜ突然料理をしようと思い至ったのか、それは勿論、彼の食欲旺盛な所にある。

誰もが知っているように、彼の食事の量は尋常ではなく、料理への執着も強い。

そんな彼が美味しそうに料理を平らげるのを見るのも、彼女にとって幸せなことであった。

ーーある日、アレンがジェリーに作って欲しいメニューをリクエストしているのを見かけた時であった。

…もし、自分の作った料理で彼を喜ばせることが出来たなら。

ふと、そう考えついたのがきっかけであった。

(料理の練習してるってバレちゃったら、色々と心配されて止められちゃうかも知れないし。せっかくなら、サプライズみたいにして喜ばせたいな)

ーーこうした思いから、彼女のこの計画は始まったのである。

果たして、無事成功するのだろうか……