Iの証明-アイの証明-【松野千冬】 (ページ8)

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武道side

白木A

千冬はあまり知らない様子だったが、俺にとっては要注意人物だったのだ。

十年後、彼女は〇〇にいたなんて正直信じられない。

こっち(過去)に戻ってきて、白木Aの様子を見ていたが、自分の予想に反して、とてもおとなしい人だった。

彼女は、あっち(現代)ではやせていたというよりかはやつれていた。

目の下には彼女自身の闇を表しているような深いくま、そして

今と唯一変わらない淀んだ瞳。

１０年の間に何があってそこまで変わってしまったのか。

なぜ、"あの人"のようになってしまったのか。

俺はあの、深く闇を宿した瞳がどうしても忘れられなかった。

あのとき見た、ニュース映像にちらっとうつった彼女。

彼女の髪の間からのぞいたあの瞳。

あの瞳をどうしても忘れられないまま

"あの人”に会ったら、なぜかとても似ていると感じた。

そして、一回も話したこともない白木Aを助けたいと思ってしまったのだ。

あんな姿になってしまった原因はわからない。

もしかしたら彼女の自業自得だったのかもしれない。

でも、俺はあの人はなにかに怯えているように見えた。

何かに囚われ、呪われている、そんなふうに思えた。