ふたり

7 ページ7

問題に気付いたのは夜になってからだった。


うちには寝具がダブルベッド一つしかない。





北「俺ソファーで寝るから、何か困ったら呼んでね。」

『風邪引いちゃいますよ！私がソファー使います！』

北「あのね、免疫下がってんのはお前の方なの。
もう夜でも暖かいし、俺は布団なくても平気。」

『で、でも！』




さすがに同じベッドは嫌だろうと思って言ったのに、
Aは一歩も引いてくれない。


かれこれこの議論も十分くらいしてる。





北「お願い。俺は大丈夫だから。」

『…、じゃあベッドで一緒に寝てください…。』





苦渋の決断。そんなふうに見えるのがなんかおかしくて。



だってさ、

前の君なら俺がちょっと本に夢中になって寝室へ来るのが遅くなっただけで


ほっくんはやく〜…

なんて呼びに来るくらい甘えん坊のさみしがり屋だったのに。



今では一緒に寝ることの方が不自然だなんて

君の姿かたちは同じなのに



俺はおかしくてたまらないんだ。





北「俺理性とんじゃうよ。」

『なっ、』





からかったように見えるだろうけど、これ九割以上本心だからね。



そんなことしたら、

俺はきっと君に触わっちゃう。



今だってギリギリで我慢してるの。





北「じゃ、おやすみ。」





まだ納得いってないAを寝室において
ソファーにひっくり返った。




家に帰って、生活してきたものを見たら
もしかしたら少しは…

なんて期待してた。



まぁそう上手くは行かなくて。



部屋に入って、

二人で撮った写真とか
旅行で買ってきたお揃いのおみやげとか


そこら中に飾ってあるのを君は不思議そうに見てた。





『これは何の写真ですか？』

『これはどこの？』





ひとつひとつ俺に聞いては、
一生懸命思い出そうとしてくれる。



右も左もわからないのに、
一番不安なはずのAが手探りで前に進もうとしてくれてる。


俺だって、ちゃんと今を受け入れて進まなきゃ



そう決めて瞼を閉じた。

8 You→←6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す