ふたり

39 You ページ39

大「A！ごめん！！」

『え？』





出勤して、今日の分の仕事を整理していると、
社長室に飛び込んできた大我さんの第一声。


急いで来たのか、ジャケットもネクタイも乱れてる。





大「樹から聞いた。
悩ませるつもりじゃなかった…。
ほんとごめん…！」





私はまだ大事なことを思い出せていない。

だから大我さんのごめんに、
なんて言ったらいいのかわからない。



ただ、大我さんがすごくつらそうなことだけはわかる。





大「俺の言ったこと、全部忘れて？
気の迷いだったんだ…。」





大我さんの声は震えてた。



これが…

嘘だって言うの…？





大「幸せになってほしいのに、
傷付けちゃった…。ほんとごめん…。」





違う…

傷付けたのは私の方だ。
私が樹さんに相談したせいで…



樹さんは大我さんになんて言ったんだろう。

二人の関係に亀裂が入ってしまった？




写真で見た、あの三人の仲を壊してしまう…

全部私のせいで…！





『大我さんごめんなさい…。
私が何も思い出せないから、
だから樹さんに昔のことを聞こうと思って…

つい口から出ていってしまったんです。』

大「そこまで追いつめたのは俺だよ。」





誰も知らないことだった


なら樹さんだって知らなかったはずなんだ。


もしかしたら私は、樹さんや北斗さんの前でだけ

いい人を演じてたのかもしれない


いつだってこうして、大我さんを傷付けていたのかも…




樹さんごめんなさい



私は結局

自分のことも、樹さんのことも


信じきることができなかった…





『大我さん』





もう北斗さんといることはできない


けど大我さんといることだってできない



こんな状態でどちらかといれば、
もう一方を傷付け続ける


信じて待ってくれてる北斗さんも

幸せを願って自分の気持ちを隠そうとしてくれる大我さんも…





『ごめんなさい。今日で辞めさせて下さい。』





そう伝えると、大我さんの瞳から光が消えた。





大「俺に対して少しでも悪いと思うならそばにいて。


どこにもいかないで俺を愛して。」

『大我さん…？』





急に人が変わったような大我さんの雰囲気を恐ろしいと感じてしまった。


お日さまみたいだった大我さんに、こんなこと言わせたのは私なのに






大「大丈夫。
Aは何も心配しないで、ただここにいたらいいんだよ。」





私を強く抱き締める大我さんの腕はひどく冷たく感じて、
まるで固く縛る鎖みたいだった

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