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「…そんな理由でやめんの。無責任くない?あんた一応、正規雇用なんでしょ」
だからちょっと、うっかりそれまでの人見知りモードがぺろっと剥がれて、俺も真面目に返事しちゃった。
『そうなんですよ…だから困ってて。私としては縁もあって受かった会社やめたくないし、続けたい。でもテヒョンさんがこうなら、早めにひいたほうがひょっとして、まだ会社的には助かるのかなって…』
「…それ、本気で言ってんの?」
これには正直、イラッとした。
テヒョンイヒョンが自分を呼んだんだって、もうわかってるって言った癖に。
どんな思いでずっと好きだったから、一緒に居たかったから、彼女を待ってたヒョンのこと、わかってて。
そんな簡単に、早めに引くって、どうして言えんの。
全部わかってて、そんなにあっさりテヒョンイヒョンを手放せるなんて。
どんだけ冷たい女だよ。
かっとなって思わず奥歯ギリギリ噛み締めたら、Aは俺の方ちらっと見て、本当に困ったように眉を下げるから、俺は今の歯軋りすっ飛ぶ勢いで拍子抜けした。
その顔は、冷たい女、の顔じゃなくて。
まるっきり、迷子の子供、の顔だったから。
『逆に、なんで皆テヒョンさんの行動、許してるんですか?』
『私の方が、戸惑うばかりですよ…仕事したいのに、困るじゃないですか…」
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作者名:フネ55 | 作成日時:2023年1月30日 20時