・ ページ22
.
本当に眠れていたのか分からないほど寝た気がしない目覚めは、どうしても二度寝をする気にはなれなかった。
隣に目をやれば、長いまつ毛を垂らして静かに眠る実弥の顔がすぐ近くにある。
肩には実弥の腕の重みだって感じる。
こんなにも近くにいるのに、何故こんなにも遠いのか。
名前を呼べばきっとすぐにその瞳に私を映すだろう。
それでも何故この寂しさは、消えてくれないのだろう。
私は肩に回された腕から静かに抜け出した。
飲み物を取ろうと冷蔵庫まで行くと、冷蔵庫に貼り付けた資源回収の案内が目に留まった。
スマホで今日の日付を確認すれば、同じ日付が画面にも表示されている。
元々纏めてあった新聞紙と、実弥が定期購読している経済誌を引っ張り出して、私は部屋を出た。
エレベーターで下へ降りると、降りた先には宇髄さんがいた。
「おはよーさん。
っておい、そんな重てーの女の子が持ってきちゃダメだろ。」
貸しな、と言って私から持っていたものをひょいと奪うと、軽々と指定の置き場へと運んでくれた。
『…ありがとうございます。』
「おう。
てか、なんか元気なくね?」
背を丸めて私の顔を覗き込んだ宇髄さんは、なんかあった?と首を傾げた。
『大丈夫だよ。何もない。』
仮に実弥が起きていたとしても、絶対にこんな風に言われることない。
それなのにどうして知り合って間もない宇髄さんが、この小さな変化に気付いてしまうのだろう。
2人でエレベーターに乗り込むと、エレベーターのモニターを見上げたまま宇髄さんが口を開いた。
「昨日、あの後大丈夫だった?」
『シたよ、実弥と。』
図ったかのようなタイミングで、目的の階に到着しドアが開くと、宇髄さんは静かに溜息を吐いた。
「それは、なんか嫌だな…」
吐き捨てるような一言に、思わず宇髄さんの方を見たが、こちらを見ることなく薄笑った宇髄さんは、じゃあまた、と足早に部屋へと帰って行った。
私はその場に立ち尽くした。
何故、宇髄さんがあんな表情を浮かべたのか、その時の私には分からなかった。
.
160人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます…! 宇髄さんの「俺を選んでよ。」、裏設定を知ると尚の事、ぐう、となりました。からの唯梨さんのオチ……私は両方のパターンを(セリフまで)妄想させて頂いてから就寝した次第です。文字数が足りません、、次作もお待ちしてます!! (2021年10月14日 7時) (レス) @page23 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 完結おめでとうございます!私は実弥と結婚しました( 〃▽〃)笑。途中ドキドキ動悸が止まりませんでした(TдT)次回作も楽しみにしてます❗ (2021年10月14日 5時) (レス) @page29 id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 完結!おめでとう!!!!!!最後の最後に私はてんてんと結ばれました…。やっぱ2人とも天才だわ!私得でしかないコラボをありがとう🤍完結後のコメは私が一番最初に貰いたかった!!!!連投失礼! (2021年10月13日 23時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!手に汗握る展開に心拍数がヤバかった!そして、急展開、どっちとも取れるオチが好きな私には堪んない!大好きな二人の合作が読めて幸せだったよ!次作!!!楽しみ過ぎる!りりちゃんのギャグ甘!読みたい!!! (2021年10月13日 23時) (レス) @page28 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 奏海さん» 師範が本当最高のオチを書いてくれたよ…流石すぎるよ…完結直前に早まってコメントしちゃう奏海ちゃん最高だよ!らぶ❤️❤️ (2021年10月13日 23時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:唯梨 x他1人 | 作成日時:2021年10月1日 22時