不完全恋愛【不死川実弥】

冗談 ページ20

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「ずるいって…？」


動揺を見せる実弥に、宇髄さんは笑顔を崩さない。

そこには私が割って入る隙など無かった。



「実弥くん、アンタ地味に結構モテるだろ？」

「いや…気にしたことねェから…
　ってか、それ言ったら宇髄さんの方がモテんだろ。」


実弥はこれ以上聞くなとばかりに宇髄さんに話を振った。


「まー俺も、昔は女泣かせな男だったよ。」

「“俺も”って、別に俺はそんなんじゃねェよ。」


そっか、と笑った宇髄さんが自分のグラスにウイスキーを注ぎ足した。


「大切にしな。
　与える愛って消耗していくモンらしいから。」

「はァ…」

よく分からないという感情がこもった実弥の相槌に、宇髄さんはさらに続けた。


「Aちゃんみたいに可愛い子は油断してっと掻っ攫われるぞ？」

『ちょっと！変なこと言わないで…』


口を挟むつもりはなかったが、これ以上話されたら私の心臓が持たない。

宇髄さんは「冗談冗談！」と悪戯っぽく笑った。



「Aはそういうのに引っかかるようなヤツじゃないんで。」



な？と私を見る実弥の視線が私を突き刺した。



『…どうかな…』



思わずポロッと出た一言に自分でも驚いて、慌てて『冗談冗談！』と取り繕った。


「変な冗談言うなよなァ。」


間に受ける様子もなく笑った実弥を見て、ホッと胸を撫で下ろす。





冗談なんかじゃないよ。

実弥が今座ってるそこで、昨日私は宇髄さんとキスをしたよ。

髪を撫でて、まやかしの愛(都合の良い冗談)を囁かれて抱かれたんだよ。

私は“そういうのに引っかかるようなヤツ”なんだから。





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