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蜃気楼*13 ページ13

*




太輔にメインで処置をしていた医者が俺を見た。




「……ふたりきりに、…してください……」




何も言わずに頷くと、医師たちは出ていった。





ベッド脇のイスに再びかける。
人工呼吸器を外し、口づけをした。




「…つめてー……」



キスしたら、目覚めたりしないかな、なんて、
ありえないことを考え始める始末だ。

何度しても、もちろん目が覚めるはずもなくて…


ぽたりと太輔の頬に涙が落ちた。



「なぁ、たいすけ、返事、してくれよ……」



太輔の胸元に顔を埋める。




夢なら覚めてくれ、
2回も太輔の死を受け入れるなんて俺にはできない。




2回、も…



「…!」


はたと気づいて立ち上がる。


「ごめん、太輔、もう少しだけ、待って…!」




俺は病室を飛び出した。
タクシーを捕まえて自宅まで急ぐ。
もし、もう一度、時間が戻せるとしたら?
太輔が死ぬ前に、もう一度、戻れるとしたら?




……もう、同じ間違いは繰り返さない。




自宅に着くとあの時と同じようにテディベアと、ライターと、諸々を持って、車に乗り込む。


制限速度ぎりぎりまで車を飛ばして海岸へ急いだ。



「…間に合った」



幸い陽はまだ昇っていない。時間は、午前3時半。
陽が昇るまで、あと30分ちょっとといったところか…



急いで準備をして、テディベアに火をつける。
…太輔からもらったものだ、いくら時間を戻すためでも心が痛かった。



失敗したら、きっと本当にもう太輔は帰ってこない。
太輔からもらったものも、失う。

普通に考えたら、時間が戻るなんて、ありえない。
だけど、一度目の奇跡を俺はどうしても信じたかった。
太輔の死をもう一度受け入れることなんてできない。




あの時と同じようにぱちぱちと音を立てながら燃えるテディベアを見つめる。

すべてが燃えると、もう陽が昇る頃で。
その灰をかき集めて、手のひらに乗せる。

そのまま海岸線をたどるように少し歩いた。
こんなありえないことにすら縋りたいなんて、俺どんだけ必死なんだろう。
周りから見たらどれだけ惨めだろう。
いい大人が時間を戻そうだなんて。



だけどそんなことは関係なくて、俺はただ太輔に生きてほしくて……

あの時のように海の方に体を向ける。
ふっと手のひらの上の灰を海に向かって吹きつけると図ったように風が背後から吹いてきた。





舞い上がった灰と陽の光の混ざりあったところに太輔の影が再び見える。


その影を追えば白い光に包まれた。




*

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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時

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