相澤先生の寝袋 [ヒロアカ] (ページ44)

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相澤先生の寝袋体育祭ページ44

現実は、得てして思い通りにいかないものである。

Aは相澤を見上げながら、深く溜め息をついた。

Aが元の身体に戻った後、相澤によって強制的に体育祭を途中棄権させられ、リカバリーガールの元に担ぎ込まれて一通り診察を受けて異常なしと判断された。

ついでに相澤も診察してもらい、治癒してもらって包帯が全部取れたのだった。

その上で、Aは現在マンションのいつもの寝室のあまり使っていないベッドに押し倒されている。

相「溜め息をつきたいのはこっちなんだがな」

『いや、なんというか個性解けるタイミングが悪いなと…思いまして
っていうか、なんで俺、先輩に押し倒されてんスか！？』

相「…押し倒されただけで、ありがたいと思えよ
俺にも、俺以外にもどれだけ心配かけたか分かってんのか」

相澤はAの上に乗りながら震えていた。

『すみません』

相「今さっきやっと包帯が全部取れて完治した俺が言えたことじゃないが…
お前が俺を心配するように、俺だってお前を心配した
今だから言うけどな、正直ずっと女のままで元に戻らなかったらと思うと眠れなかった」

『これから先、ヒーローを続けていくならこういうことも何度も起こるかもしれません
先輩だって俺だってヒーローやってるし、やめるつもりもないでしょう？
だから、どっかで割り切んないとって…先輩が大怪我して意識不明だった病室で何度も自分に言い聞かせました』

相「っ…」

『じゃあ、二人でヒーローやめますか？』

相「……」

『それとも、このままヒーロー続けて気付いたらどっちかﾀﾋんでても仕方ないですか？』

相「おい、そんな＿＿＿」

『うん、わかっています
ヒーローか俺か、そんなの比べる対象が違いすぎる。比較にすらならない。
でも俺はもしそういう究極の選択を迫られたら、確実に先輩を選んでしまう
先輩はきっと、ヒーローを選ぶんでしょうね』

相「A…、」

『先輩のそういうところが、俺はたまらなく好きなんです
先輩がどこまでもヒーローなんで、俺は先輩専用のヒーローになります
誰かを助けて犠牲になってしまいそうな先輩を、俺が助けたいんです
だから先輩の怪我を心配はしても咎めてはいけないと、そう自分に言い聞かせてはいるんですけどね…
だって、先輩の怪我は俺が先輩を守りきれなかった証拠ですから』

Aは相澤の首に手を回し、涙を流しながらその唇に口づけた。

相「俺の怪我を奪うなよ」

『怪我くらい俺にくださいよ』