相澤先生の寝袋 [ヒロアカ] (ページ22)

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相澤先生の寝袋 USJ事件後ページ22

AにはUSJ事件後、ずっと誰にも明かしていない秘密があった。

Aが墓場まで持っていくつもりだった秘密である。

口をつぐんでいたAも、さすがに相澤の悲しそうな顔を見て冷静でいられるはずがなかった。

『先輩にだけは言いたくなかったんスけど……わかりました。
正直に言いますから、まずはこんな寒い玄関じゃなくてリビング行きましょう？』

Aは相澤の手を引いてリビングに行くと、温かいスープを作ってテーブルに置いた。

『じゃ、言いますけどね
俺、あの日任務先でUSJ事件のニュース聞いちゃったんスよ
それで先輩のことだから、ﾀﾋんでも生徒を守るんだろうなって思って…
そしたらもう冷静でいられなかったんスよ』

相「…じゃあそのリンチって」

『うん、先輩の思ってる通りっスよ
せっかく回収したデータの入ったマイクロチップを握り潰して、任務に私情を挟んだ俺への報復です
だから今回俺をこんな姿にした集団は100％悪くないんス
悪いのは、何があろうとプロとしての仕事が出来なかった俺です』

相「っ、…だがそれは」

『ここで先輩は俺を叱らないとダメなんスよ
わかってるでしょ？"プロなめてんのか"って言わないと』

相「…っそれは俺の怪我のせい」

『先輩にこんな胸くそ悪い思いさせる不甲斐ない後輩で、
生徒の安否を一番に心配できない最低な副担任で、
本当にすみません』

Aは静かに涙を流しながら、相澤に頭を下げた。

相「A、そんなことしなくていい
今すぐにやめろ」

Aは頭を床につけたまま、言葉を続けた。

『俺、傍観主義やめます
誰も守れない自分は誰かを守るような任務につくべきではない
そう思ってたら、いつの間にか大切なもん全部こぼれ落ちていて…
先輩にこんな大怪我させて、その間自分はバカみたいに適当な仕事してて』

相「A！頭を上げろ！
俺はそんなことを聞きたいんじゃねぇ
そんなことを言わせるために、聞いたんじゃねぇ」

『…こんな俺ですけど、まだ先輩の傍にいさせてもらえますか』

Aは顔を上げて、相澤を真っ直ぐに見つめて大粒の涙を流した。

華奢な肩を震わせ、小さな手で自分の服を握り締めていた。

相「馬鹿野郎、…当たり前だろうが！
Aは俺のだろ…今さら分かりきったこと聞くな」

性別が変わり、年齢が変わり、声が変わり、それでもAはAなのである。

相澤にとってはAがどんなであろうと、大切な後輩であり寝袋であり、愛おしい存在なのだ。