相澤先生の寝袋 [ヒロアカ] (ページ13)

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相澤先生の寝袋任務ページ13

Aは病院に直行して、受付で面会証をもらい、相澤消太と書かれた病室の札を見て座り込んだ。

『…なんで、俺は大切にしたい人を守れないんだろう』

守りたいと思う人に手が届くギリギリのところで、届かない。

その人物が相澤でなくとも、Aにはこういうことが何度もあった。

Aが潜入任務のみを引き受けるようになった最大の理由がまさにこれだった。

誰も守れないなら、誰かを守るあるいは救うべき任務につくべきではない。

そう肝に銘じて、Aはこれについて考えることを放棄した。

手の届く範囲しか対処することができないのを言い訳に、自分の手の届く範囲が狭いことを分かっていて放置した。

そのツケが今になって回ってきたのだ、そうAは思った。

さらに手を伸ばす努力をしないヤツが、手を限界まで伸ばした少し先にある救えるばずの誰かに届かないのは当たり前なのである。

突き付けられた現状に、Aは相澤の病室の外で座り込んだまま、もはや立ち上がる気力もなかった。

ましてや、相澤の顔を見ることなど到底できそうになかった。

ｶﾞﾗ…

ﾏｲｸ「…A、」

病室から出て来たのは相澤の親友であり、Aの先輩でもあるヒーロー・プレゼントマイクだった。

『…ひざし先輩、消太先輩は…その、……いきて、ますか…？』

ﾏｲｸ「自分で確かめな
俺は帰るぜ、じゃーな」

山田ひざしは気付いていた。

いつからか、傍観主義を必死に抱えて取り繕うようになった相澤の後輩に。

自分の隣を歩く相澤を見て、無理矢理ヘラヘラと笑う後輩に。

だからこそ、ひざしは親友の後輩に何も言わないで去った。

『…、連絡、ありがとうございました。』

背中に向って頭を下げる親友の後輩が、実は自分の後輩でもあるのを分かっているからだ。

未だ目を覚まさない親友が一番最初に見るのがお前であっても、知らんふりして許してやる

とでも言いたげな背中をAに向けて病院を後にした。

そして、Aは病室に入った。

白いベッドの上に、沢山の細い管に繋がれたミイラみたいな相澤がいた。

『…せん…ぱい……？…ねぇ、…せんぱいっ…』

ベッドの傍らにある心電図を見てもそれが正常か異常かなど分かるはずもないAだが、それでもかじりつくように心電図を見た。

警報音が鳴っていない。波を刻んでいる。

ただそれだけしか分からないが、相澤が生きているという事実を証明するだけの証拠にはなった。