多忙な彼と一途な彼 (ページ7)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:56,974 hit

F ページ7

「すみません、明日仕事早いので。」

嫌な感じにならないよう柔らかい笑みを浮かべて断りを入れる。

「少しでも、ダメですか？」

目の前に立ち上目遣いで服の袖を引っ張って聞いてくる彼女。
きっと普通の男ならすぐついて行ってしまうだろう、でも俺には可愛いなんて風には映らなくて。

「すみません。」

頭を下げ離れるとタクシーを拾い彼女を車に乗せた。

「では、また撮影で。」

バタンとタクシーのドアが閉まった。その時彼女が浮かべてた笑みに気付かず走り出すタクシーを見送れば自分もタクシーを呼び家に帰った。

＋＋＋

あれから北山からの連絡はなかった。
玄関を開けるとバタバタと走ってくる音が聞こえた。

「ふじがや！」

少し慌てた様子の北山だったが、話を聞けば携帯が壊れて連絡が取れなかった、らしい。新しいの買ったぜーっと34歳にもなっておもちゃを買ってもらった子供みたいにキラキラした目で伝えてきた。

「おそかったじゃん。長引いた？」

あ、携帯壊れてたならドラマ決まったのも伝わってないか。

「ドラマ決まったんだ、その打ち合わせに呼ばれて。」

「そうなの？よかったじゃん！おめでとう！どんなの？」

「恋愛、かな。具体的にはまだ聞いてない」

「いいじゃーん、藤ヶ谷は恋愛系が似合うよ。」

その後もドラマの話をしたり仕事の話をしたりと、仕事熱心な北山に圧倒されていたが、こういうところすごく好きだなと思った。今日あったことは別に言わなくていいか、と何も言わずに１日が終わった。

＋＋＋

「キスマイブサイクー！」

お馴染みのコールで始まる番組の収録。

難なく撮影を終え、楽屋に戻り帰る用意をしたりゲームをしたりこの後の飯の予定を立てたりとメンバーが寛いでいた。

コンコン

楽屋の扉がノックされはいー？と千賀が声を上げると開く扉。

「失礼いたします。」

そこにいたのは昨日の彼女。

「みなさんお疲れ様です。同じスタジオで収録だったみたいなので挨拶に伺いました。藤ヶ谷さん、昨日はありがとうございました。少しお話があるのですがいいですか？監督からの伝言があって、」

他のメンバーはぽかんと口を開けたり頭を下げたりと忙しそう。

「監督から直接聞きますので、今日は帰っていただいても大丈夫ですか？すぐに次の仕事があって。」

彼女の元へ行き、小さい声で断る。

「じゃあ、これ、」

耳元で囁かれ、不敵な笑みを浮かべては写真をチラつかせた彼女。