happIness*1-8 ページ8
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「ご飯をよそってくださーい」
「はーい」
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良い返事をしてくれた彼が、
後ろの食器棚から茶碗を取りだして炊飯器の蓋をあけた。
あちっ、という小さな呟きが聞こえて、
ちょっと驚いて後ろを振り向いたけど、
指についているご飯を口に入れている所だったから大丈夫だろうと思ってみそ汁をよそう。
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「Aどれくらい食べる？」
「ちょっと」
「…ちょっとってどのくらい」
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お茶碗の底に少しだけ入れたご飯を見せて、
こんくらい？と笑いながら聞いてくるから、
うん、と頷いてみる。
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「はあ？もっと食えお前はほんとに…」
「翔くんがついだんじゃん…」
「はい、大盛」
「やだ(笑)半分にして」
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きゃっきゃと笑いながら丁度いい量をよそってもらう。
…良い子は食べ物で遊んではいけません。
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ご飯とみそ汁と卵焼き。
何か足りないなあと思って、冷蔵庫を覗いたら、
タッパーに入っていた鶏肉と大根の煮物を見つけて小さいお皿に入れてチンして出した。
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「緑がない」
「ええ？いんじゃね？黄色あるし」
「黄色」
「たまご」
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そう言われると、まあいっか、となってしまう。
几帳面で真面目なくせに、
ちゃんと気が抜けているから、疲れないのはいいことだ。
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「夜いっぱい食べればいっか」
「何を？」
「みどりを」
「そもそもAあんま食わねえじゃん」
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2人でいただきます、と手を合わせて
あったかいうちにみそ汁を啜る。
彼が卵焼きを口に運びながら、私のことをちらっと見て言うので、
少し考えた後口を開いた。
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「…今日は食べる」
「そうなの？」
「むしろ緑しか食べない」
「茶色も食え茶色も」
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翔くんが鶏肉をもぐもぐと咀嚼しながら言う。
おそらく茶色とは煮るなり焼くなりしたお肉のことだ、
どちらかと言うと“赤”と言われる食材ではないかと思う、
食卓に出ると茶色になるけど。
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「じゃあ今日の夜ご飯は緑と茶色ね」
「ん」
「完璧な献立ができた」
「んっは(笑)」
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こうやって、はたから見たら意味のない会話をして、
私たちのペースで歩いて行く関係は、とても居心地が良い。
当たり前に過ぎていく毎日が楽しくて、
このまま、この生活が続いて行けばいいと思う。
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少し嫌なことを考える憂鬱な朝も、
結局2人で話していれば、それも少しずつ晴れて行って、
明るい朝になるのだと、私は信じて疑わないのだ。
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