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11話 ページ12

翌日、土曜日__。
時刻は深夜3時。
夏といえど、まだ夜も明けないうちは少し肌寒い。
昨日買ったばかりの白パーカーのフードを深く被る。
私はカゴに沢山の新聞を積んだ自転車に跨り、町内を駆ける。
昨日原宿で沢山歩いた後なので、筋肉痛で足が痛むが文句は言っていられない。

 (えーと、次は…)

販売所の人から貰った住所一覧表に目を落とす。
バイトを初めて早3ヶ月になるが、記憶力が悪いせいでちっとも住所を覚えられない。

 (あれ…?この住所って…)

××町△△ビル3階。
見覚えのある文字列だ。でも、あのビルに新聞を届けたことは今まで一度もない。
同じ名前の違うビルかな?と不思議に思いながら、目的地へと自転車を走らせる。
カタカタとカゴに入った新聞が音を立てた。






あのヤ〇ザのビルだ…!!

目の前にそびえ立つビルを見て、私はそう思った。
エントランスの前に自転車をとめて、新聞を一部手に持ち階段を駆け上がる。
まさかこんなに早くまたこのビルに来れるとは思わなかった。
嬉しくてついニヤニヤしてしまう。

しかし問題が発生する。

 (……どこに入れればいいんだろう…)

ドアの前で私は立ち尽くすしかなかった。
目の前にたちはだかるドアには郵便受けがない。
壁と同じ灰色のコンクリートで出来ている分厚くて硬いドアには、新聞を捩じ込む隙間がどこにも無いのだ。
こんなことは初めてで、どうしようと辺りを見回すが、新聞を入れる所はどこにも無い。

 (床に置いておけばいいかな…)

迷って迷って、結局床に朝刊を置くことにした。
そっと新聞を置こうと屈んだタイミングで、ガチャ、とドアが開く音がした。

 「おや…」
 「あっ!」

反射的に顔を上げると、真っ黒の瞳と目がかち合った。
この間会った時とは違い、髪の毛は結ばれておらず、長い髪の毛は背中の真ん中程まで広がっている。
髪の毛を下ろしているところをみるのは初めてだ。
あの男の人だ!

 「おはよう」
 「おはようございます!!…あ、これどうぞ!」

向こうから出てくれたのは都合が良い。
床に置こうとしていた新聞を手渡せば、男の人はありがとう、ご苦労様と微笑んでくれた。
やっぱりいい人だ。

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設定タグ:呪術廻戦 , 女主人公 , 夏油傑
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- 更新止まっちゃってる感じですかね…待ってます(泣) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 62feb543dd (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - 続き楽しみです! (2021年3月10日 21時) (レス) id: f345edd9e1 (このIDを非表示/違反報告)
- この作品の夏油さんに沼りました!更新楽しみにしてます!!! (2021年2月27日 20時) (レス) id: 62feb543dd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます!頭が切れて策士で、人畜無害な笑顔で着々と夢主の外堀から埋めていく夏油傑大好きなんですよ〜!!!ぜひぜひ嵌ってください (2021年2月27日 16時) (レス) id: 3eead30ed0 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - やっべぇこの作品の夏油さんに嵌まりそう。てか嵌まらせて下さい← (2021年2月27日 10時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年2月15日 22時

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