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大学を卒業した有楽はカメラマンを職につけ、各地を巡りその風景・人・建造物を記録していた。自分のできることをしようと、貧しい地域へ行ってその現状を人々に伝えようとしたり、無償でとある本に写真を提供したりなど意欲的に活動。ジャーナリストではない彼はほとんどその日稼ぎで、リュック一つ程度の荷物しか持っていなかったが、彼なりに満足した生活を送っていた。
それから十数年が経ちある程度金銭面が落ち着いたころに、大戦争が勃発した。そのニュースを見て「残すべきだ」と考えた有楽は、戦争のなかを巡り一つでも多く記録を残そうと奮闘。一つ二つと国を回ったときにさすがに危ないと判断し、それ以降はボディーガードを雇って二人で戦地を駆け抜けた。
怪我をした兵士、瓦礫に潰された女性、追剥にあった男性、餓えをしのぐために葉を齧る子供。その全てを目にし、収め、自分の無力さを繰り返し痛感した。けれど、無力なりの戦いをするために、その歩みを止めることだけはしなかった。
戦後にはかつて自身が撮った建造物や風景の写真を複数の図書館に寄付するなど、無力を悔いるように率先して協力。有楽自身も時折図書館に寄っては、地域の子供たちに体験談を聞いてもらう活動をしていた。その活動場所の一つが、ゲンスフライシュ図書館だった。
ゲンスフライシュ図書館に写真を届けに来たある日、建物へと歩いている最中、図書館内で大きく銃声がした。どごんッッと戦場で聞いたような激しい音、太く空にあがる灰色の煙、ちらちらと舞うガラスの破片。──ゲンスフライシュ図書館事件である。
有楽はその場から一度避難し、全てが終わったあとに血の溜まり場になった図書館を目撃することになる。再び突き付けられた無力さに、有楽はただただ呆然とすることしかできなかった。そのときの写真は一枚も撮られていない。
数日の呆然の後、有楽は「自分ができることは何かないだろうか」と考え始める。ただ写真で伝えるだけでなく、もっと大きな“なにか”をしなければと思ったのだ。
進んで戦後の復興を手伝い、カメラマンを続けながら模索する最中、有楽は6組織の設立の話を耳にする。そのとき、自分が今できることはこれだと直感したのだ。
そうして人の助けになるために、図書館協会への所属を決意。言ノ葉衆という組織と出会い、現在に至る。
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作者名：風雪妃月 | 作成日時：2022年1月2日 2時
