事務員さんの彼女。２ (ページ37)

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60話ページ37

百「なんで?
オレの方がお兄さんなんだぜ」

大「...こんなところで、泣きたくない...」

百「はは...かわいい奴だなあ
大和のそういうところ大好き。
今夜は強引に誘っちゃってごめんね。
また今度、ちゃんと話そうよ。
涙目になっても、問題ない場所でさ」

大「...... でも、そんな...
百さんだって仕事忙しいのに...」

百さんはウインクをして、

百「気にしないで
大和の話、オレも聞きたいからさ」

大和くんは気まずそうにしながらも
私を見て、何か言おうとしている。

百さんの前に行かせてもらい
大和くんの目の前に立った。

大「......、あの...」

『なに...?』

大「......えーと、ま、また電話するわ!」

失礼しますと言い、走って行ってしまった。

『...えぇ、言い逃げですかー』

百「...Aちゃん」

優しく名を呼ばれるが、振り返らない。

百「Aちゃん、こっち向いてよー」

今、振り返ると絶対私は泣いてしまう。

百「おーい、Aちゃーん」

はぁ、仕方ないと諦めたような声が聞こえて
ホッとしていた私が甘かった。

百「えいっ! はは...やっぱり泣いてるじゃんかー」

肩に手を置かれて、クルッと強制的に
振り向かされたのだ。

楽しそうな表情をしているが、
やはり先程の言葉を気にしているのか
いつもより元気がなかった。

『...百さん』

百「ん?」

『......万理やユキさんは
百さんが思っているようなこと、
絶対に思ってませんよ。
百さんのこと、とても大切な人だと思ってますから
大丈夫ですよ。だから...』

百さんは目を見開いた。
そして、泣き笑いの顔で、

百「ありがとう、Aちゃん!
...あぁ、右手こんなに握りしめちゃダメだよ」

私の右手に優しく触れながら
少し血が滲んでいるのを見て、
うわっ痛そう、痛い?と聞いてくる百さん。

この人は、本当に優しい人だ。
優しすぎて、自分が傷ついても、
それを隠して、太陽のような笑顔で笑うのだ。
人一倍傷つきやすくて、頑固で、
自分を追い込むほど悩んで、
1人で答えを出してしまう。

百「Aちゃん...?」

不思議そうに自分の名を呼ばれてハッとした。

『だ、大丈夫で...』

カシャ

『え...?』

百「な、まさか...」

もしかして、週刊誌の記者...?
それとも...っ、怖い...‼

頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。
体が恐怖から震えてくる。

百さんが戸惑いながら、
自分の車に乗せて小鳥遊事務所まで送ってくれた。