事務員さんの彼女。２ (ページ14)

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37話ページ14

『Mission』の撮影初日。
大和の演技に納得がいかない様子の監督に
抽象的な指示をされた。
その様子を見ていた千は監督に話しかける。

「...はぁ、やりにくいな...」

千「監督」

「うわっ! 千くん、びっくりした...」

千「もっと、具体的な指示を
出してあげればいいじゃない
職人じゃなく芸術家なんて、新人には
抽象的で究極的な指示すぎるよ。
僕なら混乱して発狂してハカを踊ってる」

「ハカ? マオリの...?」

千「そう。
わけもわからず鼓舞するしかないから。
僕の時みたいに、丁寧にしてあげて」

しかし、監督は千葉志津雄さんの息子に
あれこれ言うなんて無理だと言う。
千が志津雄さんは気にする人じゃないと答えると
監督の恩師の元に息子をよろしく頼むと
電話があったそうだ。

「若いし、大事な時期だから
志津雄さんの方で教育したいんじゃない?
今回だって相談しながらやってるでしょ」

千「......」

「違うのか? 不仲って噂が本当?
だから星影以外でアイドルデビューしたのか?」

千「... 僕からはなんとも」

「わかった、聞かない。
まあ、二階堂くんなら大丈夫だよ。
千くんも、二階堂くんも
可能性のたくさんあるいい役者だ。
アイドル役者なんて言わせたくないんだ」

さらに監督は、千は根っからのアーティストで
感性が鋭くて、マイペースで、孤独だったから
混乱しなかったと言った。

千「孤独なんて、やめてくれない?
僕には５周年を迎えた相方だっているし、
今だっていい先輩をしてる」

「君みたいな人たちは、流れていく川さ。
誰かの元に留まれないし、
誰かが君に留まることも出来ない。
流れが淀めば、水は濁って、汚れてしまう。
そう知ってるから、君を愛する人こそ
惜しまず去って行くんだ」

千「......」

監督はまさに志津雄さんがそうだったと言う。
''あの人の輝きは誰にも理解されない孤高の輝き''
だからこそ、家庭には向かなかったのだと...。