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横に座って、手に触れて、あっという間に時間は過ぎた。
ベッドサイドに置かれた時計は12時を回り、
窓から見える月はとうに真上を通り過ぎている。
呪いの気配も、違和感も、何も感じない。
目を覚ます様子もない。
八十八橋の件はどうなっているだろう。
恵は無事に祓えただろうか。
『……恵、?』
震えながら光った携帯電話に手を伸ばし、
通話ボタンを押す。
荒い息遣いが聞こえるだけ。
名前を呼んでも、返事はない。
『恵。津美紀は平気だよ。何も起こらなかった。』
「……そ、うか…。よかった、」
『ねえ、大丈夫?帰って来られる?』
「…………………、指…」
『?』
「………虎杖…と…、釘崎……が…」
気になるワードを言ったまま黙ってしまった恵。
暫くそのまま返事を待ってみたが、
寝息のような規則正しい呼吸が聞こえる。
無茶して呪力を使い果たしてしまったのだろう。
怪我がないか心配だが、
死んではないようで一安心だ。
『…ねえ恵。私ね、今津美紀の手を握ってる…』
「……。」
『乗り越えようと頑張ってたけど、私には無理みたい。それでも、…いい?』
「……。」
眠っている相手に言っても意味はないけれど、
返事は期待していない。
ただいつも私を気にかけてくれた恵に伝えたかった。
抱えきれないほどの愛をくれた母に会って、話して、見送って、
少し自分を愛してみたくなったのだと。
許せない自分も、乗り越えられない自分も、
愛してみたいのだと。
『前に言ってたよね、津美紀は 誰かの幸せを願える人だ って。』
「……。」
『私も思い出したよ。いつも私たちを心配して、優しかった津美紀のこと。』
後悔ばかりしていたせいで、
津美紀のことを忘れてしまっていた。
母も、津美紀も、
恵も、夜蛾先生も、硝子も、他の仲間も。
あんなに私を想ってくれていたのに。
自分の呪いと弱さばかり見て、責めて、
見えないように隠していたのは自分だった。
『……私、幸せ者だった。気付くのに、こんなに時間がかかっちゃった。』
「……。」
『………ねえ恵。もしかしたら、恵は嫌がるかもしれないんだけど…』
「……。」
『私…、 ―――――― 。』
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妃 - すごく素敵な作品でした!個人的にその後の恵を見たいです。続編も楽しく読みます。 (2020年11月27日 20時) (レス) id: edafa70660 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初めまして。昨日の夜からこのシリーズ全て読ませて頂きました、振り回される五条凄く好きです、主人公も好きです…!こちらは完結でしょうか?もし続きあれば楽しみにしています! (2020年11月17日 11時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - とっても面白く、素敵な小説で何回も読み返しています(><)!!アンケートの件ですが「チューベローズの初恋 続」後の9年間のお話を希望します...!!! (2020年10月18日 1時) (レス) id: ff2316c362 (このIDを非表示/違反報告)
SS(プロフ) - 9年後のお話希望です!新しい方のお話とも悩んだのですが、まだチューベローズの五条悟が読みたいです、、! (2020年10月17日 20時) (レス) id: 9f946892a2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆで卵(プロフ) - 度々コメント失礼します!チューベローズの初恋 短編集を読んでみたいです…!!!元許嫁のお話もとても面白そうで悩んでしまいましたが、チューベローズの初恋をもっと読みたいなと思いました。新しい作品も応援してます!! (2020年10月17日 0時) (レス) id: 18a070aa90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年5月23日 12時