チューベローズの恋人【呪術廻戦】

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遮光カーテンも突き破って射し込んでくる光で目が覚めた。
時計を確認すると、貴重な休みがもう半分終わろうとしている。

誘惑に負けた自分を悔やみながら、
床に落ちていた服を適当に拾って肩に羽織り、床に足を付ける。
でも歩くたびに腰に響く鈍い痛みと、
離れる体を咎めるように伸びてくる手のせいで思うように進めない。





「……行くの？」

『うん。暫く行けてなかったから。』





「…もうちょっとだけ。あと5分。」

『さっきのそれのせいで、予定より3時間も押してる。』





どこか満足げに、意地悪に笑う悟。
悪びれる素振りもない、憎たらしく、子どもみたい。
そんな所も愛おしく思ってしまう自分が嫌になる。

綺麗な瞳はそれすらお見通しみたいに、彼は笑って起き上がって、
羽織っていたシャツをずらして肩にキスを落としてきた。




「じゃあ今夜、続きして？」

『…優しくしてくれるなら。』





「なにそれ。可愛い。」

『もう可愛いって言われて、素直に喜べる歳じゃない。』






忙しすぎる毎日に、
幸せな時間はあっという間に過ぎて、
いつの間にか、もうこんなに大人になってしまった。

自分より若くて、可愛らしい女の子は
街を歩いても、高専の中でも、眩しいほどたくさんいる。

30歳なんて、寝ても疲れは取れないし、
すぐ胃もたれするし、肌も荒れる。碌なもんじゃない。






「喜んでほしくて言ってないよ。昨日の夜も、今も。可愛いと思ったからそう言ってる。」

『…ありがと、』






「Aさんは綺麗だ。ほんと、困るくらい。気を抜いたらすぐ変な虫が寄ってくる。知らないでしょ、僕がどんな思いで任務の帰りを待ってるか。」

『悟だって良い男だよ。私には勿体ないくらい。』








「そんなに僕の良さが分かってるなら、早く結婚して。」

『…それは嫌。』








「…。」

『卑怯でごめんね。早く誰かと幸せになって。』





悟にこんな顔をさせるのは、もう何回目だろう。
それでも懲りずに、愛想も尽かせずに、
何度も何度も愛の言葉を囁いてくれる。

あなたと結婚して幸せになる覚悟も、
自分から身を引く度胸もなくて、
それでも愛してくれる優しさに甘えたままの狡くて卑怯な女。

五条悟の隣には不釣り合いで、相応しくないのに
大人しく誰かに譲ることもできない。







「嫌だね。僕の隣をAさん以外にあげる気はないから。」

『…、』





「大丈夫。ちゃんと待ってるさ。」

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