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「ねえ伊地知、今Aさんが就いてる任務知ってる?」
「?、知りませんけど…」
地方任務から飛行機で戻り、
空港から高専までの車移動の途中で
やけに静かな五条さんから話しかけられる。
多忙で疲れているというだけかもしれないが、
いつもなら今頃これでもかと長い足を組んで
無茶な要求を一つや二つ……いや、六つ以上は言われているはず。
このしおらしい態度が嵐の前の静けさのようで逆に怖い。
「……あっそ、」
特級呪術師が就く任務は、任務自体の難易度は勿論の事
扱う情報の量も機密性も跳ね上がる。
補助監督の負担も大きいため、基本的には1人が専属で担当し、
準備から報告書まで請け負うことが多い。
そのため、僕がただ任務先だけを調べるにも
適当な理由をでっち上げて、いくつかの申請をして、と
無駄に手間がかかってしまう。
当然五条さんが個人的に香月さんに聞くのが
早くて簡単なのだが…、
わざわざ僕に聞くということは喧嘩でもしているのだろうか…
「……。」
「帰ったら調べておきましょうか?」
「お前今面倒だから自分で聞けよって思っただろ。」
「イ、イエ…」
「Aさんに仕事先まで把握しないと気が済まない男だと思われたら責任とれるの?」
「いや…、優しい方ですし、そんなことにはならないんじゃ…」
「当たり前だろ。喧嘩売ってんの?」
「…スミマセン。」
いつもより大人しいなんて勘違いも甚だしい。
口数が少ないのは恋人のことで頭がいっぱいなだけで、
普段の数倍は扱いづらい。
:
香月A…
容姿端麗で実力も秀でた女性呪術師であり、
穏やかで親切な言動から補助監督からの評判もいい。
―が、恐ろしい方だ。
一体どのように調教すれば
あの五条さんがこんな他人を慮る男になるのだろう…。
「…………ハァ」
「…。」
学生時代、
五条悟を捨てた女性がいると噂になったことがある。
いつも年上のモデルのような美女を連れて好き放題している五条さんを、自ら手放す女性がいるとは思えず、当時はただの噂だと思っていた。
それが彼が4年になったある時から
ピタリと女遊びを辞め、
暇さえあれば自ら会いにいく変わり様。
これは僕の勝手な想像だが、
きっと今も彼女は、
五条さんの心を簡単にかき回し、振り回している。
この最強の男を、
こんなに情けなく弱らせて。
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妃 - すごく素敵な作品でした!個人的にその後の恵を見たいです。続編も楽しく読みます。 (2020年11月27日 20時) (レス) id: edafa70660 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初めまして。昨日の夜からこのシリーズ全て読ませて頂きました、振り回される五条凄く好きです、主人公も好きです…!こちらは完結でしょうか?もし続きあれば楽しみにしています! (2020年11月17日 11時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - とっても面白く、素敵な小説で何回も読み返しています(><)!!アンケートの件ですが「チューベローズの初恋 続」後の9年間のお話を希望します...!!! (2020年10月18日 1時) (レス) id: ff2316c362 (このIDを非表示/違反報告)
SS(プロフ) - 9年後のお話希望です!新しい方のお話とも悩んだのですが、まだチューベローズの五条悟が読みたいです、、! (2020年10月17日 20時) (レス) id: 9f946892a2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆで卵(プロフ) - 度々コメント失礼します!チューベローズの初恋 短編集を読んでみたいです…!!!元許嫁のお話もとても面白そうで悩んでしまいましたが、チューベローズの初恋をもっと読みたいなと思いました。新しい作品も応援してます!! (2020年10月17日 0時) (レス) id: 18a070aa90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年5月23日 12時