夢見心地【ラーリアム】(リクエスト) ページ36
涼しい風が頰をかすめる、爽やかな朝。
未だルクス集めに従事するキーブレード使いの姿は見えず、小鳥のさえずる音だけが残る閑静なこの街を、ボクは一人歩いていた。
向かう場所は一つ。愛しているあの子の住んでいる家だった。
「やあ、おはようA」
「……おはよう……?」
目的地に辿り着き、その扉をノックする。
すると、暫くして顔を出してきたのは、まだ髪も整えず寝ぼけ目でこちらを見上げるその子だ。
腕に抱いているチリシィはスヤスヤと眠っている。
「ほら、髪を整えてあげるから、椅子に座って」
「……?……??」
何やらちんぷんかんぷんな様子のAを、両肩を押して側にある椅子へと誘導する。
目が覚めて間も無いのか、椅子に座るなりそのままうつらうつらと夢心地だ。
ボクは櫛と髪紐を持ってくると、可愛らしいその子の頰にキスをし、手触りの良いその髪を梳き始めた。
「他の準備もしてあげるから、早くデートに行こう」
髪は結び終わったが、未だにぼーっとしているAにそう声を掛けると、その子はゆっくりと頷く。
無口なその子のそんな反応に、ボクの口元は少し吊り上がった。
「……ふぁあ……あれ? キミ誰?
Aの知ってる人? 」
Aの支度を段取り良く進めていると、今まで眠っていたその子のチリシィが起きた。
どうやら、Aよりも目覚めは良いらしい。
「ああ、ボクはAの恋人だ」
「……そんな事知らないし聞いてないよぉ。
A……寝ぼけてないで起きて! A!」
不審に思ったのだろうか。
チリシィはAの身体を揺らすと、大声でその子を起こそうとする。
すると、自分の名前を呼ばれたのに気が付いたその子は、我に返る様に顔を上げた。
「……ど、どうしたの?」
「あの人、本当にAの恋人なの?」
「……! ううん……アナタ誰?」
チリシィに言われ、こちらを見るなり刮目したその子は、僅かに呆然としながらもボクにそんな事を問う。
……何かあったんだろうか?
ボクを忘れるなんて。
「……ボクはキミをいつだって愛しているのに。
ボクはいつだって一緒にいたのにな」
「あ、あの……?」
困惑しているAの手をとって、その手の甲にキスを残す。
すると、なぜか短い悲鳴を上げて震え出したその子に、ボクは優しく笑いかけるとこう告げた。
「いいよ、もう一度やり直そう。
今度は忘れる事のない様に、もっと愛してあげるから」
親の心子知らず【ヴィクセン】→←君だけでいい【ナミネ】(リクエスト)
120人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時