【王国心】歪め 愛せよ 我等の御心 【短編集】

いつかの日に【ストレリチア】 ページ32

私には最近、ずっと気になっている男の子がいた。
無口で、ルクスの回収をきちんとしながらもいつも誰かを探している様子の不思議な子。

まだ話したことは無い。それに、私が一方的に知っていて、その子は私を知らないくらいに今は遠い関係。

話しかけたくても勇気が出なくて、かと言って見かけないと落ち着かなくなってくる。
だから私は少しずつ、少しずつ、その子の事を隠れて見守る様になっていった。



「あそこにハートレスが出たよぉ」

「うん……行こう」


今日もあの子は駆け回る。
真剣な表情をしてハートレスを倒すその姿は、やっぱり凛としていてかっこいい。

いつも通り、建物の陰から顔を覗かせてあの子を見てると、私のチリシィが言った。


「あの子の事、よっぽど好きなんだねぇ」

「……うん。私、あの子の事もっと知りたいの。」

「……やり過ぎは禁物だよぉ」


チリシィの言ったことに、私は少しムッとする。

……まだ、やり過ぎては……ない。
だって、まだあの子の事で私が知らないものは沢山あるから。


「……Aくん。 私にもっと教えてよ。」


今はまだ君の名前とか、住んでいる家とか、ユニオン内の成績とか……そんな事しか分からない。
私は君の好きな事やちょっとした癖でも知りたいの。

それで、私がAくんの全てを知れた時___そこで初めて君に伝えるよ。

初めまして、って。


Aくんの事をあらかじめ知っていれば、こんな私でもすぐに仲良くなれる。

Aくんの好きな食べ物をあげたり、Aくんの心に響くような言葉をかけれたり。
そうして、君のそばに私は居続けたいと思うの。

だから、今は静かに観察するんだ。


「……いつか来る、その日の為に」

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