息が詰まりそうだ【リク】(リクエスト 過保護) ページ27
「やっほーリク! またかけてきたの?」
「……一人で大丈夫かと思ってな」
直接会話している時とは違って、少しくぐもった様子のあの子の声。
画面の中に見えるAは、こうして会話を交わすと近くにいる印象を受けた。
だが、実際はずっと遠い世界にいると思うと、それが何だか不思議な感覚と共に不安も覚えてくる。
一緒にいる時もいつの間にかふらっと消えて行くその子に、正直言って気が気でない。
「もー、リクは心配性だなぁ。
大丈夫だって、私強いから!」
……そう言われても、全然安心出来ないんだ。
まあ、確かに胸を張って笑ったその子に、別段おかしな所はない。いつも通りの調子で答えるAに見えた。
「……ん?」
「どうしたの?」
拭えない心配からか、俺がジーッと画面の中のその子を見ているとふと、その子の姿にどこか違和感を感じた。
「A……その手はどうした?」
「手? ……あ、これか!
さっき少しぶつけただけ。何ともなーい!」
Aがそう言って振る左手には、痣が見える。白い肌に映える赤々しいその痣は、何故かとても痛々しいものに見えた。
Aが怪我をした。
その事実に、例えそれが軽くぶつけた程度の軽い傷でも、悪寒が正面から強風に吹かれるかの様に俺の全身に広がっていく。
そして、脳の血が急激に下がっていく冷たい感覚に、短く息がはっと漏れた
「……リク? 顔色悪いけど大丈夫?」
その子は首を傾げ、此方を見てくる。
見つめてくるその純粋な瞳に、俺は何故か震え出した身体を気付かれない様に抑えつけながらも返した
「……俺は別に平気だ。
それよりも、本当に大丈夫なのか?
痛くないか?俺が行ってやろうか? 」
「だ、大丈夫だって!
私ってそんな危なっかしいの!?」
その質問に間も無く頷いた俺に、Aはがっくしと肩を落とす。
……だがな、少し目を離すとこれだ。危なっかしいどころの話じゃ無いぞ
もう、これからはこのモバイルポータルも手放せないな、とその子を見ながらも俺は思った。
基本的に細かく連絡を入れ、お前の様子はいつでも把握する。
もし、連絡が途切れたりしたのなら、どんな状況だろうと俺はお前の元へ駆けつける。
何度も何度も……鬱陶しいと思うかもしれないが、これはお前の為だ。Aを守る為なんだ。
……ああ、お前の側に居られればこんな事もっと簡単なのに。
頭がごちゃごちゃと絡まっていき、遂にはその不安がいつまでも消える事はなかった。
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時